岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記 2011.06.29

■6月某日 大震災の復興がなかなか進まない。被害区域があまりにも広域にわたることもあるが、瓦礫の片づけも仮設住宅の建設も思い通りにいっていない。もちろん、街自体の復興となれば、まったく先行きが見えない。おまけに、カンジンの原発の収拾も難航している。放射能汚染水を取り除いて冷却水に使う循環型のシステムも一進一退。原発施設内の汚染水がタンクや原子炉建屋内からあふれて海や地下に流出する事態になれば、被爆の被害はさらに拡大することになる。気仙沼ではマグロの初水揚げが話題になったが、放射線の影響は大丈夫なのか。福島県がようやく国に頼ることなく、独自に全県民の放射線量の測定を始めた。遅すぎだが、県民にとっては好ましいことだ。放射線は、今や東京から関東周辺まで放出されている事実にもう少し敏感たれ、だ。バカのひとつ覚えのように政府が言う「人体に影響はない」ですまされるものではないはずだ。
  にもかかわらず、東電も原子力保安院原子力安全委員会も、どこか他人事のようだ。連日記者会見に出てくる保安院の西山審議官の不倫も週刊誌にスッパ抜かれて解任されたが、国家的な危機状況に置かれているという状況の認識が甘いのではないか。仕事柄心的ストレスもたまるだろうが、原子炉内で防護服とマスクをつけて被爆の恐怖と戦いながら作業を続ける原発従事者の方がはるかに気の毒だ。もちろん、官邸や民主党の関係閣僚もしかりだ。海江田経済産業相原発収拾のメドもたたない中で、玄海原発の再稼働を指示し顰蹙を買っている。いくら、国家プロジェクトたる原発政策のためとはいえ、そんな非常識が国民に理解されていると思っているのだろうか。空気が読めないやつだ。 
  玄海村の村長が交付金欲しさに原発再稼働の方針を打ち出しても佐賀県知事や周辺地域の自治体が賛成するとは思えない。ドイツやイタリア、スイスなどが脱原発を打ち出す中、もはや脱原発政策は避けて通れない国民的課題である。東電の株主総会も開かれたが、株主は自分たちの利益を追求することが基本的動機である。原発がなくなれば、株主も大損害を被るだろう。しかし、それでも、原発反対の株主が多いという事実には注目したい。福島第一原発の事故により、カネよりも人命第一ということに気が付いたという事ではないのか。ひとたび、今回のような大原発事故が起これば、20兆円以上の復興資金や保証金の供出が必要になる。原発は安全でコストが安いという主張は、完全なる神話でしかないことが明らかになった以上、もはや選択肢は他にないはずだ。原発で最大の被害者となった福島県知事も福島県自民党県連も脱原発を打ち出したことは大いに説得力がある。どちらも、これまで原発推進派だったからだ。
  民主党菅総理は、与野党から袋叩き状態に置かれている。政権の座にしがみつくための節操なきえげつない人事などが反感を呼んでいるのだろう。むろん、菅おろしに全力を挙げている民主党執行部の仙谷、、前原、枝野、岡田、安住などのメディアを使った露骨な引きずりおろし作戦に反発し,菅総理が依怙地になっている部分もあるはずだ。ならば、脱原発に興味もなく増税しか興味のないこういう執行部連中に一泡吹かせるために、再生エネルギーへの方向転換と、「脱原発」を掲げて解散総選挙に踏み切ったらどうか。どうせ、民主党は次の選挙には絶対勝てないのだから、最後のイチかパチかで、「国民投票」的選挙をやればいい。この機会を逃せば、間違いなく「原発利益共同体」と推進派の逆襲が始まるからだ。「経済が低迷する」「全面停電が起きる」といった東電や経団連の人命を屁とも思わない連中のオドシに言いたいのは、原発がどうしても欲しければ、東京のど真ん中・お台場につくればいいということだ。ついでに、普天間基地もお台場に移設してほしいものだ。ま、菅総理には不可能だろうから、せめて原発停止とお台場への移設くらいやってみたらどうか。過疎の村にカネで危険な施設を押し付ける霞が関官僚や東京都民にも危機感を共有させるためにも、だ。そうすれば、菅氏は間違いなく歴史に残る「狂人総理」として名を残すはずだ。
http://www.uwashin.com/2004/indexdiary.html