自己証明

  『自己証明』
自己証明をせよ と郵便局の窓口にある
運転免許も保険証も無しでは暮らせない
自分で自分を証明せねば誰もしてくれない
 毎日々々ひたすら耕せば暮らせた時代と
 毎日々々自己証明をせねばならぬ時代と
 これは又何という変わりようであろうか
そもそも 己は何ものであるか
いずれより来たり いずれに去る者か
いよいよ自己証明せねばならない時だ

[自己証咀]−白バイが来て免許証を見せろ、とテレビでよく見る場面だ。病院でも受付でまず保険証。自分が自分を証明するのではなく証明書が証明する何とも奇妙な時代。これは人間不信の現れでもある一つの悲しさだ。
   『今や己はかくかく也との自認を請求されている』
 証明書がまかり通ってオレが言うのだから間違いないと言ってもダメという事は、単に人間不信に止どまらず、実は人間省略を意味する。せめて自分だけでもオレはオレだと自認出来るのでないと生きている事にはならない。                田辺聖恵