釈尊の聖言 「ビクと商人」

 釈尊の聖言 「ビクと商人」
「ビクらよ、もし異教の者が、おんみらに『おんみらはシャモン・ゴータマに従い、天界に生まるる為に清浄の行をなすや』と問われなば、おんみらこの問いをいとうや。」「世尊、然り」
「ビクらよ、もしおんみらが天の寿命、天の幸福をもってしてもなおいとい嫌うなれば、おんみらはその前に、自らの身口意の三悪業をいとい嫌わねばならぬ。」
「ビクらよ、三つの素質ある商人は得ざる富を得ず、また得たる富を増すことかたし。…
    「ビクと商人」
 シヤモン・ゴータマとは出家修道者(シヤモン)である釈尊(ゴータマは個人名)のことである。一己者としての人間ブッダで、宇宙に遍満するような抽象仏などではない。この釈尊が弟子に質問し、考えさせ答えさせる。
 これこそ優れた教育者のやり方だ。答えた方はそれに責任を持たねばならなくなる。師説を単にう飲みするといった方式ではない。これこそ「生き方学」たるゆえんだ。天命を待つなどといったアイマイなものでもない。ここでは天の寿命(永生)や天の幸福(理性を通さない主観的満足)などを批判する。その程度で満足出来ないとするのが釈尊仏教である。であれば、天の幸福に至るような信仰(意)行動(身)口称言論(口)を嫌悪し、それらを離脱せよと云う。何を目指すかを明確に理解し、それを達成する確実な方法を学習するのが、誰にでも可能な方式だ。