おりじなる童話 かきのみ 一つ

吉永光治のおりじなる童話

かきのみ 一つ

あさ ともこが ごはんを たべていたら

「にわの かきのき きって しまうか」

おとうさんが しんぶんを よみながら いった。

「そうね…もう かきは ならないかも しれないわ」 

おかあさんは おちゃわんを あらいながら こたえた。

「かきのき きったら だめ」

ともこは ごはんを たべかけたまま おとうさんと おかあさんの あいだに かおを つっこんで いった。

にわの かきのきは ともこが うまれたとき おとうさんが うえて くれたって おかあさんから きいて いたのです。

「かきのみが たくさんなるのと うえかえるなら いいだろう」

「ともこの かきのきよ」 

ともこは くびを よこに ふると おこって ごはんを たべのこしたまま へやを でていった。  

「らいねん なるかも しれないから まちましょうか」

「そうするか」

おとうさんは かいしゃに でかけた。

おかあさんは おとうさんを みおくって ふと にわを みたら ともこが かきのきの したに たって だれかと はなしているみたいだった。

「だれと はなしてるの」 

おかあさんは まどを あけて きいた。

「だれとも はなしてないわ」

ともこは はしって かきのきから はなれて そとに とびだして いった。

ともこは あのひから かきのきのしたに いくひが おおく なった。

あめの ふるひは かさを さして かきのしたで うたっていた。

ゆきの ふるひは かきのはに つもった ゆきを おとしながら かきのきの まわりを はしりまわっていた。

「かきのきと どんな おはなししてるの」

おかあさんは かきの きのしたに いって ともこに きいた。

「わたしね」

ともこは ちいさい こえで おかあさんの みみに くちを よせて いった。

「そうだったの」

おかあさんは ともこの あたまを なんかいも なでた。

つぎのとし かきのきに おおきな かきが 一つなった。

「なった なった かきがなった」

ともこは かきのきのしたで とびはねていた。

ひがくれだし ゆうひに あたった かきが ともこの めには あかりが ついたよ
うに あかく あかく おおきく みえた