おりじなる童話 ぼうし

吉永光治のおりじなる童話

 ぼうし

「どんな ぼうし かってくるかな」

おかあさんが いま かいものに でかけたとこです。

ともこはへやで えほんを みていました。

えほんのなかは ぼうしがいっぱい。

あかいりぼんのぼうし つばひろのぼうし はなのついたぼうし むぎわらぼうし おじいさんが かぶっている みどりのベレーぼう。            

「どのぼうしが いいかな」

ともこは ほんの なかを ぐるっと みました。

「あかい ひらひらリボンが ながいぼうしが いいな」         

「あっ きいろい はなのついた ぼうしも いいな……」 

「うみに いくとき うみにいくときは…」

「うみにいくときは むぎわらぼうしさ」

「ええっ」

うしろを ふりむくと ねずみが たって いました。          

うみにいくときは むぎわらぼうしさ。ぼく それ ほしいなあ」

「いいわ かぶれるならね」     

ねずみは さっと つめで むぎわらぼうしを ひっかけました。     

「うあーい ぴったりだ ありがとう」

ねずみは むぎわらぼうしを かぶると くるりと はしらのすきまに きえて いきました。   

どしん。  

ともこの うしろで じひびきが しました。ふりかえると おおきな みみを ぱたぱたさせた ぞうが います。

「ぼくの ぼうし あ・る」

ぞうさんの ぼうしなんかないわ」

「ジャングルから きたんだから ぼくのぼうし なんとかしてよ」

ぞうは ながいはなを くるんくるんまわして あかいリボンのついた ともこの だいすきなぼうしを おさえました。

「あっだめっ。そのぼうし わたしのよ」

「ぼうし もらってくるって みんなに やくそくしたんだ。ジャングルに かえれないよ」  

「ぴったり あったら あげるわ」

ぞうは あかいリボンを。はなで ひっかけると くるくるまわして ぽーんと ほうりあげました。    

「うあーい かっこ いいぞう」

「かっこ いいけど、そのぼうしあげない」

ともこは おおきなこえで さけびました。ぞうは あわてて ぼうしを かぶると ぶるぶるんと ふるえながら ちいさくなって きえてしまいました。  

バターンと ドアがあいて おかあさんが かおを だしました。  

「ほら ともこのぼうし かってきたわよ」

「うあっ しろいぼうし ありがとう。あれっ ぞうさんがいる……ねずみさんもいる。どうして どうして」

「さあ どうしてでしょうね。かがみのまえで かぶってごらん よくにあうわよ」

ともこは しろいぼうしを かぶると

ぞうさんも ねずみさんもいっしょに うみに いこうね」

かがみに むかって ちいさな こえで いいました。