おりじなる童話 おばあちゃんのせんぷうき

 おばあちゃんのせんぷうき

なつが くると ぼくの おばあちゃんは おしいれから ふるい いろの はげた せんぷうきを だしてくる。

「また ふるい せんぷうきを だして……クーラーを いれて ちょうだい」

おかあさんは かおを しかめて いう。

おばあちゃんは きこえないのか せんぷうきの スイッチを いれて すずしい かおをする。

「しかたがない おばあちゃんね」

おかあさんは ぼくに むかって おばあちゃんの ことをいう。

「どうして あんな おんぼろ せんぷうきが いいのかなあ」

ぼくは そとに あそびに いった。

ぼくが あそびから かえってきて おばちゃんの へやを のぞいたら せんぷう  きに かかっていた。

おばあちゃんは ぶつぶつ なにか いいながら めを ほそめたり わらったり なみだを ふいたりしていた。

「へんな おばあちゃん」

ぼくは だいどころへ いって おかあさんに きいた。 

「おばあちゃんが ないたり わらったり しているよ。どうして」  

「どうしてかしらね…」   

「そうね おばあちゃん きっと むかしのこと おもいだして いるのよ」

「おもいだしているって なにを」

「そうね むかし せんそうで いえが やかれて おばあちゃん しにそうになったことが あるのよ」

「ふーん おばあちゃん かわいそう」

「あの せんぷうきはね せんそうで やけのこったんだって おばあちゃんが いって たわ」  

「おばあちゃんの おもいでの せんぷうき だったんだね」

ぼくは だいどころを でると おばあちやんの へやを のぞいてみた。 

おばあちゃんは にこにこ わらいながら せんぷうきに かかっていた。

ぼくは へやに もどると クーラーのスイッチを きった。 

まどを あけると すずしい かぜが ふいてきた。