鳩山氏は沖縄に東アジア共同体に関する財団方式の研究所を3月にも立ち上げる方針。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

2013.02.22
■2月某日 TPPと普天間基地移設という難題をかかえたまま安倍総理が総理就任後の初訪米。オバマ大統領との会談内容が注目されるところだが、今回は表敬訪問の意味合いが強いので、トップレベルの会談としては、それほど目新しい内容は出ないだろうと思われる。しかし、外務・防衛の官僚レベルでは水面下で着々と謀議が進行しているはずである。特に、辺野古新基地建設に関して、来月中に埋め立て申請を沖縄県に要請する方針だと伝えられる。いわゆるオバマ大統領への手土産だろう。TPPに関しては自民党内でも意見が大きく割れているので、党の統一見解としてまとめ上げるのは至難の技だろうが、米国にとってTPPは日本を取り込むのが国策的至上命題。反対に、自民党に党が割れてもTPP参加を決めるだけの強い決意があるとは見えないし、米国に「TPP参加 NO!」を突きつけるだけの度胸があるようにも思えない。「聖域なき関税撤廃」というTPPの原則を微妙に「解釈変更」して、参加する可能性を米国との間で探る方針と見た方が正解だろう。
 安倍訪米と相前後して、麻生財務大臣がモスクワで開かれたG20に参加。米国の「ウォールストリート・ジャーナル」にマフィア・ファッションと書かれたスタイルで参加し、話題になった。本人は日本がデフレ脱却の為に為替相場を誘導しているとの批判をかわすために、マフィア・ファッションで気合を込めたつもりかもしれない。しかし、それにしては国民のだれもが驚く異様なファッションだった。G7の声明では日本への直接的批判は回避されたものの、今後は国際的により一層注目されてヨーロッパや新興諸国からの批判が強まる可能性は否定できない。北方4島問題を抱えるロシアへは、森喜朗元総理が安倍総理の親書を携えて、プーチン大統領と会談。今後,プーチン大統領安倍総理の間で「どちらも勝ち負けのない引き分け」に向けて交渉が進むだろうが、先行きは見えない。それにしても、元総理3人がいまだに要職に居座り続ける自民党も奇怪だ。
 尖閣諸島には相変わらず中国の公船が領海内に侵入し、中国側の挑発行為が続いている。島根県では2月22日を「竹島の日」と定め、島尻安伊子参議院議員内閣府政務官)を式典に派遣した。実効支配を続けている韓国側も反発を強めている。いずれ、韓国の朴新大統領と安倍総理の間で話し合いが持たれるだろうが、日本を取り巻く、北方4島、竹島(独島)、尖閣魚釣島)の国境問題は一筋縄ではいかないだろう。それにしても、沖縄の基地問題を抱える島尻安伊子議員を韓国との外交問題の矢面に立たせるという政府のやり方はいかがなものか。外務官僚の狡猾な根回しという事なのか。
 沖縄でも新たな動きがあった。辺野古移設に関して、環境アセスのやり直しを求めた市民の裁判提訴に関して、那覇地裁はアセスのやり直しを認めず、違法性に関しては判断を回避した。政府や防衛省としては何が何でも普天間辺野古移設を推進するつもりなのだろう。東村のヘリパッド建設の工事は着々と進んでいる。民主党参議院、植松、川崎議員二人の離党。国民新党自見庄三郎議員も自民党入りを希望している。政権を失った民主党・海江田代表に求心力はなく、このままでは7月の参議院選挙でもジリ貧は避けられないだろう。
 沖縄の基地問題が全然進展しない状況の中で、議員を辞職した鳩山由紀夫元総理が沖縄にやってきた。宜野湾市での講演のためだが、講演前に、20人ほどの関係者との昼食会が開かれた。普天間基地の県外移設や東アジア共同体を掲げて政権交代を成し遂げた鳩山氏は、その後、側近の閣僚や霞が関官僚などの安保マフィアたちの裏切りに会い、最終的に辺野古移設を容認した。しかし、鳩山氏はいまだに普天間基地海兵隊の抑止力を否定し、東アジア共同体の必要性を強く主張しており、沖縄に東アジア共同体に関する財団方式の研究所を3月にも立ち上げる方針。政府にとっては鳩山氏の動きは憎々しい限りだろうが、沖縄県民にすれば確実に新たな希望への途である。筆者も可能な限り、私人となった鳩山氏のサポーター役を務めたいと考えている。