賃金の上昇なくして、消費税増税などもっての他ではないか、メディアの諸君よ!  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

2013.02.16
■2月某日 今年は例年より冷え込んでいる日本列島。亜熱帯・沖縄の温度は高い方だが,日が落ちると、風が冷たく感じる。毎日、ジャケットなしでは肌寒すぎる気温だ。それでも、プロ野球のキャンプは沖縄に集中し、暖かさを求めてやってくるので、まだ気候的にはマシという事なのだろう。しかし、沖縄は気温以上に寒々とした雰囲気がある。そのひとつは政治に対する無力感だ。次々と沖縄にやってくる安倍内閣の閣僚たち。今回は岸田文雄外相が訪沖した。岸田外相も仲井真知事や佐喜真宜野湾市長らと会談したものの、相変わらず「普天間基地の固定化は避けなければならない」の常套句を繰り返すだけ。そんなことは、沖縄県民の誰もが思っていることだ。沖縄の総意は仲井真知事を先頭にして普天間基地の県外移設を要求している。政府としては、普天間基地を固定させないためにも、辺野古に新基地をつくりたいのだろうが、県民の強い反対をよく知っているので言い出せないのだ。今月には安倍総理が米国を訪問し、オバマ大統領が会談を行う予定があるため、普天間基地の移設に道筋をつけて、手土産にしたいのかもしれないが、沖縄側に辺野古新基地建設を受け入れる状況はまったくない。
 ロシアに巨大な隕石群が落下したり、北朝鮮が地下での核実験を実施したり、中国からPM2・5という大気汚染物質が日本に飛龍したり、尖閣諸島に中国の公船が押し掛けたり、グアムで日本人観光客の無差別殺人事件が発生したり、世界は騒々しい限りだ。日本の福島第一原発メルトダウン後の詳細が国民に情報公開されているとは思えない。最悪の事態に備えて、総理の緊急談話が検討されたり、石棺による原発6基の廃炉計画も検討されたというが、それも最近表ざたになった新事実だ。民間の事故調査委員会原発事故現場の調査を東電側が虚言を弄して、拒否したという事実も表ざたになった。しかし、今なお安倍政権は原発再稼働への意欲を捨てていない。カンジンの原発のゴミの処理をどうするのかという方針もまったく打ち出されていない。放射線に汚染された地区の除染も遅々として進まず、避難住民が地元に戻るメドもまったく立っていない。電力会社は原発を再稼働できないために経営的に厳しいとの理由で電力料金の値上げを要請している。
 国策として続けてきた原発が想定外の未曽有の大事故を起こした。それはそれでやむを得ないにしても、この事故を教訓にして新しいエネルギーのありようを真剣に検討しなければ、日本の将来の展望は打ち出せないし、滅亡への途しかない。アベノミクスもいいが、原発こそが日本にとって最大の熟慮を払うべき国策ではないのか。TPPという日本の将来を決めてしまう還太平洋パートナーシップ協定にしても、最近のメディア報道や政治の流れを見ていれば、なし崩しで参加を決めてしまうのではないかという危惧を感じさせる。安倍総理予算委員会の最中に二回ほど抜け出してトイレに駆け込んだといわれている。ストレスで潰瘍性胃腸炎が再発したのでなければいいが、難題を抱えた政権のトップリーダーの体力に不安があるとすれば、これこそ国の命運を危うくする一大事ではないのか。
 メディアは株高と円安ではやし立て、安倍政権の支持率もあがっているというが、この流れがいつまで続くかはかなり疑問である。ロシアではG20の中央総裁会議が開かれているが、日本の円安に対して為替誘導ではないかと疑問を投げかける国々も出ている。グローバル化した国際経済の中で、日本だけがいい目をみることなど不可能だ。まして、景気が多少上向きになっても、カンジンの賃金が上昇しなけれれば、国民の生活は豊かにならない。賃金の上昇なくして、消費税増税などもっての他ではないか、メディアの諸君よ!