上から目線で凝り固まった、失言癖のある麻生太郎  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

2013.01.22
■1月某日 アルジェリア人質事件は最悪の事態で幕を迎えそうな展開となってきた。プラント建設の大手である日揮の日本人社員10人中7人の死亡も確認され、日本政府も公式に認めたが、残り3人の日本人はいまだに行方不明だ。おそらく、遺体が大きく損傷し、DNA鑑定が不可欠の状態にあるのではないか。日本政府は首都・アルジェに政府専用機を飛ばし、生存が確認された日本人と7人の遺体などを緊急帰国させる予定になっている。安倍総理は「痛恨の極みで言葉もない」と発言し、「卑劣なテロ行為は決して許されるものではなく、断固非難する」との声明を出した。菅官房長官も同様のコメントを出した。
 それにしても、この事件は、アルジェリア政府の情報統制とイスラム過激派と人質を無差別に殺害する強襲作戦のせいもあって、情報が錯綜して真実が見えない。テレビでは中東情報通とされる外交専門家たちが様々なコメントを出していたが、そもそも日本政府じたいに情報がなく、アルジェリア政府や米、仏、英国などの情報や報道に頼り切っていた。アルジェリアの南東部にあり、砂漠の広がるイナメナスは首都のアルジェから1100キロも離れている。情報コントロールも容易いはずだから、要注意だ。
 テレビの映像で初めて見た天然ガスのプラント施設は、広大な砂漠の中で蜃気楼のように威圧的に建設されていた。イスラム武装勢力に対するアルジェリア政府軍や警備にも油断があったのではないか。現地では日本企業の日揮だけでなく、英国の大手石油会社BPやノルウエーの石油会社も運営にあたっていた。今や、国境を越えて「聖戦」(ジハード)を主張するイスラム過激派組織から見れば、外国資本に「侵略」された地域である。当然、過激派のターゲットにされる可能性があると想定するのが当然だろう。ましてや、隣国のマリではフランス軍が、イスラム過激派掃討のための空爆を展開中だ。ゲリラ側がフランスへの報復を宣言し、フランス当局も国内でテロ行為に対する警戒を強めていた。にもかかわらず、この大事件である。
 日本政府が被害者の詳細発表で遅れをとったことや、日揮の被害者リストを非公開にしたことなども不可解だった。メディアも取材ビザが下りないために、すべては政府や日揮に頼るしかない。なぜ政府が被害者リストを非公開にしたのか疑問だ。しかし、メディア各社は独自のルートで被害者の身元を割りだし、遺族の取材を敢行していたが、何か不都合でもあるのだろうか。アルジェリアには鹿島、大成、ハザマなどの大手企業も進出している。ゲリラ側は今回のアルジェリア政府の非妥協的な強硬手段にもかかわらず、戦線を撤退するとは思えない。ゲリラ側の声明通り、日本企業や外国企業に対するテロ行為は今後とも続くと見た方が正解だろう。イスラム過激派と欧米の強大国との間には、埋めがたい歴史的な因縁もあり、複雑な関係性だ。政府は自衛隊法の改正や外国軍との情報交換ルートの確立を持ち出しているが、経済のグローバル化時代のおいては中東だけでなく、中国や世界各国でもテロの可能性はあるはずだ。
 カンジンの危機管理に関しても当の安倍総理が、この危機じたいの中で、タイやインドネシアを訪問していた。最終的には予定を早めて帰国したが、日本の危機管理の最高責任者がこのありさまだ。副総理の麻生太郎財務相終末医療で、「さっさと死ねるように」とか、患者に対して「チュ―ブの人間」などと発言。上から目線で凝り固まった、失言癖のある麻生太郎は、日銀に対しても政治圧力をかけて、無制限の金融緩和とインフレターゲット2%の物価高政策に同意させた。安倍―麻生といった一度終わった無責任な人物たちが日本の政治を私物化したら、この国の混迷はますます強まるのではないかと大いに危惧する。