ホクソ笑んでいるのは既得権益を守る霞ヶ関の官僚たち  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

2013.01.17
■1月某日 米国・オバマ大統領との会談が2月に延期された安倍総理が、代わりというわけか、ベトナム、タイ、インドネシアの東南アジア歴訪の旅に出た。小料理屋を始めた昭恵夫人も同行し、仲よく手をつないでいるシーンも放映された。ファースト夫人としては公務みたいなものだろうが、夫妻仲は大丈夫なのか。脱原発にまったく意欲を見せない安倍総理との立場の溝は埋まったのだろうか。総理就任後、初の外遊で私的な時間はあるだろうから夫婦でデスカッションしてみたらどうか。これは夫婦問題というよりも、日本国民全体の将来にかかわる大問題である。と思っていたら、アルジェリア天然ガスのプラントを建設中の日本企業・日揮の社員3人がイスラム過激派に誘拐・拉致される事件が発生した(後に日本人二人は解放)。フランス軍のマリへの空爆に対する報復であることは確実だろう。詳細はまだ不明だが、安倍総理もこうした非常事態は想定していなかったのだろうか。危機管理の最高責任者である総理が官邸にいなくて大丈夫なのか。
 総理がいない間にも、山本一太沖縄担当大臣や小野寺防衛大臣が沖縄を相次いで訪問した。あいにく仲井真知事は胆石の摘出手術で入院中。代わりを副知事が務めたが、二人とも沖縄に関しては無理解のタイプ。今回は初回という事もあって、口うるさい山本大臣も、小野寺防衛大臣も神妙な顔つきだったが、2人とも日米両政府の意向通り普天間基地辺野古移設推進派である。特に、小野寺大臣は朝日ニュースターのテレビの討論番組で一緒になったことがあるが、沖縄に対する認識はネット右翼(ネトウヨ)なみのレベルだった。番組のテーマは沖縄問題だったにもかかわらず、あまりにも低次元の話ぶりにこちらも珍しく切れそうになった(苦笑)。今回の訪沖でも、小野寺防衛大臣辺野古を訪問し、基地推進派と接触している。この程度の人物を沖縄担当大臣や防衛大臣に選んだ安倍総理の人事選別能力を疑いたくなる。
 人事だけでなく、カンジンの金融政策に関しても危なっかしい。総理就任前から日銀の無制限金融緩和策や国土強靭化のために、今後10年間で200兆円を投下するなどと宣言し、株高と円安を促進させたが、これがいつまで続くかは怪しいものだ。緊急経済対策の補正予算も20兆円規模を打ち出した。更に、経済財政諮問会議を復活させ、産業競争力会議も立ち上げた。メンバーに新自由主義にして市場原理主義竹中平蔵を起用したことでも、安倍政権の経済政策の方向性は明白だ。財務大臣麻生太郎元総理である。さっそく、消費税増税の前に所得税相続税増税も決めた。その反面、生活保護の引き下げも打ち出している。安倍総理の経済政策の恩恵を受ける企業もあるだろうが、所得の低い国民にとっては踏んだり蹴ったりで、格差社会はより一層進むだろう。こうした政策の裏側で,ホクソ笑んでいるのは既得権益を守る霞ヶ関の官僚たちである。
 他にもいる。消費税増税を支援した新聞などの大手メディアである。消費税増税での軽減税率が課題となっているが、食料品などの生活必需品に加えて「新聞」も加えるように働きかけているのだ。その言い分は「国民がより少ない負担で新聞を容易に購読できる環境を維持していくことは、民主主義と文化の健全な発展に不可欠」というもの。呆れてものもいえない。雑誌や書籍などの出版物はどうなんだ、と言いたくなる。長期療養中だった反骨の映画監督・大島渚氏が、肺炎で帰らぬ人となった。せめて最後に、「新聞のインチキ、バカ野郎」と大島監督に遺言を残して欲しかった。大島監督に、合掌!