タカ派の老政治家集団では、少数政党の域を出ないだろう。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■10月某日 国会は依然として休会中。解散したくないが、赤字公債特例法案と衆議院定数是正だけはやらざるを得ない野田民主党と、解散総選挙の年内実施を強く要求する自民党公明党の綱引きが水面下では展開中。29日の臨時国会開催は予定されているが、野田総理が問責決議を受けている参議院では、野田総理の施政方針演説は行われないままに開会という異例の事態。衆議院では、野田総理の施政方針演説は行われる見通しだが、野党側のボイコットという事態も考えられる。支持率が10%を割り込んだ野田政権には先行きも見えず、局面の打開策は見えない。
 こうした政治の機能不全を見透かしたように、石原慎太郎東京都知事が電撃的辞任を発表し、新党結成に踏み切った。平沼赳夫率いる「たちあがれ日本」との連携が前提とされている。しかし、タカ派の老政治家集団では、少数政党の域を出ないだろう。日本維新の会みんなの党との連携がうまくいくかどうかを見極める必要があるが、政策も理念も相違点が多すぎて、単なる野合集団になりかねない。少なくとも消費税増税脱原発という基本的政策の違いは、決定的ではないのか。
 石原氏は辞任の記者会見では、霞が関官僚システムを痛烈に批判し、今こそ薩長連合の心意気が必要だと力説。メンタルとしては橋下大阪市長と相通じる部分もあるのだろうが、それだけではなく、政策の摺り合わせがなければ、国民の支持は得られないだろう。内容的には石原発言に同感できる部分もあるが、80歳の老政治家がいまさら国政に復帰しても、何ができるというのだろうか。記者会見を見ている限り、威勢だけはいいが、話の展開に論理性が消えていた。しかも、一度国政を見切った人物である。おそらく、溺愛する石原伸晃議員が総栽選で惨敗し、自民党内での地位も人気も急降下したために、政界再編に勝負をかけたというのが真相ではないのか。
 石原なき東京都知事の後継者は誰なのか。石原自身は猪瀬直樹副知事を後継指名していたが、ブレーンならともかく都知事としてのイメージは浮かばない。おそらく、東国原元宮崎県知事も立候補するものと見られるが、東京都民の支持を得られるかどうかは別問題である。他に強力な候補者が出ない限り、盛り上がりに欠ける師走の都知事選挙になるのではないか。
  しかし、それにしても、沖縄的視点で見れば、石原新党日本維新の会みんなの党にも期待は持てない。むろん、自民党民主党も同じである。仲井真知事は県主催のシンポジウムをワシントンで開催して、沖縄の置かれた差別的な現状を訴えた。県としては初めての試みであり、対米交渉を放棄している外務省や防衛省とは別に独自ルートで直接的な沖縄外交に踏み切る土台を築けたのではないか。この間、沖縄では危険きわまりないオスプレイ普天間基地配備を断行し、沖縄本島上空で危険な訓練飛行を日夜繰り返している。筆者の住む新都心の上空でもヘリモードでの飛行訓練が堂々と行われている。日米合意など、完全無視の暴挙である。そんな最中に、女性暴行・強盗事件が起きた。どうして、沖縄はこうした破廉恥事件が多発するのか。日米両政府にとって、沖縄は日米安保の犠牲になってもらうしかないという本音があるのではないか。米国側にも沖縄は元植民地という感覚が軍の高官から末端の兵士にまでしみついているのではないか。
 そんな中、沖縄タイムスの社会部長を今年退職した屋良朝博氏が、「誤解だらけの沖縄・米軍基地」(旬報社)の新刊本を出した。日米安保マフィアや本土メディアなどが長年虚偽の報道を続けてきた沖縄問題に徹底批判を加え、論理的矛盾を的確に指摘している。オスプレイの抑止力などという戯言を信じている、他人事感覚の日本人や本土メディアの記者たちにとっては真実が的確でわかりやすく書かれた本である。当ブログの読者は当然としても、多くの人々に一読することをぜひお勧めしたい一冊である。
2012.10.27