オスプレイが強行配備される今日からが、沖縄のホントの闘いになるはずだ。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■10月某日 強くて大型の台風17号が沖縄本島に上陸したため、山口県岩国基地に駐機して訓練や体験飛行を終えたMV22オスプレイ普天間基地への配備は3日間ほど延期されたが、台風が遠ざかると同時に再び強硬配備を決めた。県民意志を完全無視した日米両政府のやり方は異常といわざるを得ない。米国は何をそんなに焦っているのか。代表選や総裁選のメディア・フィバーのおかげで支持率が浮上して浮き足立つ自民党民主党も国政を司る資格はない。沖縄差別・切り捨てで運営される国家なんてインチキ極まりない。米国のタテマエ的金科玉条の民主主義の完全破綻のヤリクチには怒りを通り越して絶望的気分に陥る。しかし、それこそが米国追従の日本政府の狙いだろうから、そうは問屋が卸さない(苦笑)。沖縄県民の怒りは今や爆発寸前である。オスプレイ強行配備前夜ですらこれから書く一触即発状態なのだから、沖縄の怒りは今後どうなるのか、予測もつかない。
 配備の前夜、普天間基地の野嵩ゲートの抗議の現場を見に行った。米軍基地の前にバリケード代わりに駐車した運動団体の車6台ほどを沖縄県警が次々にレッカーで撤去し、座り込みで抗議する人たちをごぼう抜きで排除する一部始終を目撃できた。沖縄県警が基地前にコンテナトラックで運びこんだ簡易のバリケードがつくられ、車も人も強制排除。オスプレイ強行配備と同じやり方に国家の本質を再認識させられ、学生時代の記憶も蘇った。鉄条網で守られた米軍基地の中ではMPたちが、海兵隊の服装で写真を撮影したり、睨みあいの構図。抗議グループから「ヤンキーゴーホーム!」という怒号が発せられていたが、こんなシーンを見たのも何十年ぶりだろうか。普天間基地のすべてのゲートが、車と人によるバリケードという戦術によって閉鎖された。野嵩ゲート前の入り口道路20メートル程度は米軍の専用使用地のため、沖縄県警は法的にはまったく根拠のない排除に踏み切り、沖縄でも滅多に見られない緊迫した光景が出現した。
 3時間ほど現場をウォッチしたが、抗議団は200名くらいだっただろうか。メディアも地元だけではなく、大手各社が出そろっていたが、ほとんどこの歴史的な光景が全国的に報じられることないだろう。地元メディアは別にしても、全国メディアはオスプレイの強行配備で「刺身のツマ」程度のあつかいで終わるはずだ。オスプレイ強行配備は日米両政府の国策であり、東京を拠点にする全国メディアには国策に逆らう勇気はない。原発や消費税増税同様に大本営発表をサポートするだけである。いまさらいう事もないが、日本のメディアは第二次世界大戦時代の報道と構図はほとんど変わっていない。今回の抗議団の動きに絡めてネットなどで呼びかければ、参加者が10倍、20倍に即刻ふくれあがる可能性大である。そうでない限り、目先を変えるだけの組閣優先の野田総理に反省などという二文字を想起させる可能性はゼロである。いわんや、自民党はもともと対米従属の最大の先導者だった。A級戦犯間違いなしである。NHKも対米従属の元祖・吉田茂を持ち上げるドラマを放送するなど、現状認識も歴史認識も大間違いだ。ピンボケも甚だしい限りと言わざるを得ない。
 タイミングがいいというか、マスコミ倫理懇談会の全国大会が那覇市で開催された。全国300人規模のメディア関係者が沖縄にやってきた。地元メディアもその内容を大きく取り上げていたが、参加者の大手メディアの幹部氏と呑む機会があった。その幹部氏から沖縄基地問題を再認識して取材の体制を見直す必要があるという前向きな意見が聞けたことは収獲だった。意外と、沖縄の現実はメディア関係者ですら知られていないのだ。普天間基地の野嵩ゲートの抗議メンバーの中に、「砂上の同盟」という著書もある沖縄タイムス論説委員や社会部長をつとめた後、今年50歳で早期退社した屋良朝博氏の姿があったこともカンド―的だった。基地ゲート前の合法的な車と人によるバリケードは警察により撤去されたが、オスプレイが強行配備される今日からが、沖縄のホントの闘いになるはずだ。
2012.10.01