それにしても、メディアの世論操作はひどすぎる。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■9月某日 沖縄本島に向けて「大型で猛烈な台風」16号が向かっている。おそらく、今週の日曜日には暴風域に入るはずだ。瞬間最大風速80メートルというのは、前回の台風15号で予想された瞬間最大風速の70メートルを超えている。もっとも、台風15号は大騒ぎした割には瞬間最大風速で約41メートルだった。気象台の台風予想が当たるとは限らないが、近来稀にみる大型台風とはいえる。尖閣諸島には、日本が国有地として取得したことで、香港の抗議船に次いで、中国の監視船6隻が尖閣諸島の海域を航海。これまでも監視船が領海内に入ってくることはあったが、一度に6隻というのは初めてのことだ。中国本土では、日本大使館や領事館前で、「尖閣魚釣島)は中国固有の領土」というプㇻカードを掲げた活動家たちが激しいシュプレーヒコールを繰り返している。中国との間で予定されていたイベントも次々と中止となり、中国在住の日本人もオチオチしていられないのではないか。領土をめぐる民族意識の高まりや国威の発揚は歴史的にみても戦争による解決に突き進みかねない。頭を冷やして外交と対話で解決すべきが筋である。仮に局地的な軍事衝突が中国側から仕掛けられれば、被害を受けるのは沖縄である。日本政府にとっては、沖縄が犠牲になっても国としてのメンツが保てれば、OKという「捨て石」感覚なのだろう。
 それは、危険なCV22オスプレイの強行配備の方針をいっさい再検討する気配のない日米両政府の対応を見ていればよくわかる。宜野湾海浜公園の県民大会に10万1000人が集まって抗議の声を上げても、藤村官房長官が「警察発表では2万5000人」とわざわざ発言した背景には、<沖縄の反対なんて関係ない。日米安保で機種の変更は当然>という、県民意志を無視した傲慢さが潜んでいるのだろう。森本防衛大臣が何回説明に来ても、オスプレイの危険性が除去できるわけではない。日米合同委員会でオスプレイ運用の取り決めを話し合っているというが、結論は見えている。沖縄や岩国の代表も参加させて、地元の意志を考慮するのは当然だろう。防衛・外務官僚に任せていても埒があかないのは、日米地位協定という手枷足枷がある以上、当然の帰結なのだ。せいぜい配備時期を少しずらすことくらいが関の山だろう。
 野田総理参議院で問責決議を受けて、休会となった国会。尖閣竹島問題も政治の空白を見透かした行為であることは間違いないだろう。大震災・原発事故の収拾も遅々として進まない中で、政治空白を作っても政治家にとっては他人事なのだろう。メディアも参戦して民主党代表選、自民党総裁選一色の報道。だが、民主党野田総理の再選が確実だろう。4人の候補の中では原口一博が一番まともで良心的だが、寄らば大樹の陰の体質が身にしみついた民主党員の中で勝ちあがるのは不可能だろう。一方の自民党候補の顔ぶれにもうんざりだ。3年間政権の座から遠ざかったこともあって、日本の旧悪だった自民党時代の長老たちがここぞとばかりゾロゾロ顔をだしている。まるで。ゾンビのようだ。谷垣総裁を引きずり下ろした「明智光秀」のような下剋上石原伸晃外務大臣もやったが、何もしなかった無能派の町村信孝防衛大臣もやったが、官僚丸投げの軍事オタク・石破茂、あわてすぎの林芳正。沖縄的には全員とも期待度ゼロだ。ゾンビの代表が潰瘍性大腸炎で政権を投げ出した安倍晋三。よく、立候補する気になったものだ。女性スキャンダルで自殺した松下金融大臣くらいのセンシビリティはないのか。
 それにしても、メディアの世論操作はひどすぎる。民主党代表選、自民党総裁選、それと、橋元「日本維新の会」しか報道しない。少なくとも、民意は脱原発、反消費税、反オスプレイ、先送りされる予定の反TPPではないのか。メディアはその民意を潰したいという本音が透けて見える。少なくとも、沖縄には失われた長い歳月がやってくるに違いない。
2012.09.14