米国の強行配備で、これまで基地を受け入れてきた沖縄との間に深い溝ができることは確実だろう。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■9月某日 「オスプレイ普天間配備反対」と「危険な普天間基地の即時閉鎖」を求めた大規模な県民大会が宜野湾海浜公園で開かれた。主催者発表によると参加者は約10万1000人。仲井真県知事が直前になって、参加しないでメッセージだけを送るとの最終判断を下したため、檀上で代理人が知事のメッセージを代読すると、会場の一部からブーイングが起こった。県知事もオスプレイ配備に対しては反対しているものの、各政党や市民団体、経済団体も反対し、せっかく足並みをそろえて共同代表を務めているのに、知事の直前の不参加表明は理解に苦しむ所業だった。「市民運動と行政の実務担当者とは違う」という知事のお門違いの言い分に説得力はない。政府に対し、概算要求とは別に那覇空港の拡張工事を要求していることで、行政の長として裏取引しているのではないかと見られても仕方があるまい。最後まで参加するように説得を続けた身内でもあるの翁長雄志那覇市長が、「仲井真知事の独自のキャラクターなのだろう」と皮肉を込めたコメントを出していたことが印象的だった。
 会場では、「琉球新報」連載中の作家・佐藤優夫妻や、地元紙の社長、政治部長、記者らと遭遇。「産経」の沖縄支局長や東京の新聞社、テレビ局まで知り合いにも遭遇。暑い中、チャーターバスで駆け付けた参加者が多く、朝11時からの大会開催といった条件を思えば、大成功といえる大会だった。しかし、この結果を見て、日米両政府がオスプレイの強行配備を断念する可能性はほとんどなし。米国の強行配備で、これまで基地を受け入れてきた沖縄との間に深い溝ができることは確実だろう。大会終了後、会場で偶然にあった企業人のN氏が、「これから会場の隣にある宜野湾ヨットマリーナに停泊しているヨットで出航するというので、ヨット内で、簡単な食事をごちそうになる。時間があれば、ヨットにも乗りたかったが、以前からオスプレイ県民大会の後、宜野湾市の「うない」で二次会がセットされていたので、後ろ髪を引かれる思いで飲み会を選択。県民大会の度に総括を兼ねた飲み会は恒例になっており、メンバーは今回の大会の仕掛け人でもあった喜納昌春県議会議長を中心に、平良長政氏、県庁OB,大学教授、元メディア人、医者、企業人などで、お疲れ様と「総括」を兼ねた飲み会。喜納氏が大方の予想を裏切って、県議会議長に選出された経緯も聞けて有意義な飲み会となった。
 この県民大会前の3日間は多忙な日々だった。前日は沖縄市の海の見える高台にあるプール付豪邸で50,60人が集まるホームパーティに呼ばれたので、ギャラリー経営者のN氏に那覇市内から送迎してもらう。この豪邸の主は独身の女医Oさん。どこかの高級ホテルなみの派遣シェフ付のビッフェ形式パーティで、オペラ歌手のMさんが4曲ほど披露するシーンもあった。豪邸の持ち主の気遣いあふれるホステスぶりも板についており、謎の豪邸女主人の私生活や沖縄上流社会の一端が垣間見えて興味深かった。
 その前日は元朝日新聞論説委員などをつとめた藤森研氏が教鞭をとる専修大学人文・ジャーナリズム学科の「夏期集中講義」を受ける学生20数名を前にタイムス会議室でパネルディスカッション。司会は沖縄タイムス論説委員長の長元朝浩氏。パネラーは、元タイムス社会部長の屋良朝博氏、共同通信支局長の大野圭一郎氏、シンガポール「聯合早報」東京特派員の符祝慧女史、それと筆者。終了後は、豊崎でのビーチパーティ。元タイムス専務の大山哲氏や同社の特報部エースの渡辺豪氏,聖トマス大学準教授の森宣雄氏も合流して、老若男女混合のビーチパーティ。筆者は初体験だったが、それなりに楽しめたのは意外な収穫だった。ゴタゴタの政局については次回にでも書こうと思う。
2012.09.10