オスプレイ配備に関しては県民世論はほとんど反対派で、賛成する声はほとんど聞いたことがない。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■8月某日 台風15号が大東島方面から、沖縄本島に向かっている。那覇市内は今のところ晴れの天気だが、明日あたりは沖縄本島に上陸予定だ。今回の台風は「大型で非常に強い勢力」で、最大風速50メートル、最大瞬間風速は70メートルが予想されている。近来、稀にみる大型台風だ。沖縄県民は台風に慣れているのでそう心配することはないが、観光立県の沖縄としては、台風襲来による経済的な損失の方が心配だ。さらに、台風以上に観光業界に悪影響を与えかねないのが、欠陥機・オスプレイ普天間基地強行配備である。地元紙の報道によると、来月中旬には岩国基地から普天間基地への移動が行われるという。当初の10月配備を早めた形だ。9月9日にはオスプレイ反対の県民大会が宜野湾市海浜公園で開かれる。オスプレイ配備に関しては県民世論はほとんど反対派で、賛成する声はほとんど聞いたことがない。そうした県民の総意を知りつつ、それでも強行配備を目論む日米両政府の傲慢すぎるやり方には口あんぐりだ。
 仮にオスプレイ普天間基地に配備されれば、市街地で離着陸することになり、危険性は高い。普天間基地だけではない。嘉手納基地、伊江島飛行場、キャンプシュワブ、東村の高江に建設中のヘリパッドも使われる計画になっており、沖縄本島全体がオスプレイ墜落事故の危険性にさらされることになる。そんな危険な島に観光客が来るのだろうか。米国はオスプレイは欠陥機ではない、事故率も低いなどという嘘の情報をしきりに流す。モロッコやフロリダでの墜落事故に関しても人為的ミスであったことを繰り返す。防衛省も、一応、米国で独自調査をやっているが、「オスプレイは安全」という結論を覆すことはありえない。日本の対米従属の根は深いのだ。テニアンの市長が普天間基地の誘致を申し出ても、日米両政府は歯牙にもかけない。鳩山総理時代に、このテニアン市長やグアム、サイパンの市長クラスが官邸に基地誘致で陳情を賭けた時も、官邸は鳩山総理に一切伝えることなく、勝手に門前払いを食わせている。普天間基地辺野古新基地に移るという防衛省や名護市の誘致派などの既得権益死守派の強い意志と思惑が絡んでいるとしか思えない。
 米国は沖縄に在日米軍基地の74%を押し付ける根拠として抑止力という言葉を念仏のように唱えている。しかし、先の香港の活動家たちの尖閣諸島上陸に際しても、米軍は素知らぬ顔をしていた。抑止力にもなっていないのだ。領土問題には関知しないというのが米国の立場だが、尖閣諸島の中には米軍の占有施設もあるのではないか。今回、尖閣諸島に上陸した香港の活動家たちはもともと中国共産党の独裁に反対する人権活動家だった。香港から船をチャーターした費用は香港人実業家が提供されたとされているが、実は原資は米国の某財団という説もあるほどだ。米国としては、日中が平和的な外交交渉で接近することを嫌う対アジア戦略がある。日中間に火種を残し、双方がいがみ合う事こそが、米軍の沖縄駐留の根拠と存在感につながるとの戦略だ。
 今回の日中間のトラブルで、オスプレイの強行配備を加速させる可能性もある。軍事力を増強させる中国は危険な国だから、CH46に代わる次世代機MV22オスプレイの配備で中国大陸まで射程におさめて牽制するという大義が出来る。オスプレイ製造に存亡をかけた米国の軍需産業も安泰だし、次は日本の自衛隊への売り込みだ。米国本土やハワイでは地元住民の反対でオスプレイの運航は制限されている。しかし、その配慮は、沖縄に関しては完全黙殺だ。ヘリと通常の飛行が可能だというオスプレイが人為的ミスだけではなく、機体そのものが持つ構造的欠陥である事は自明ではないか。大型台風を前に、オスプレイ沖縄本島の上空を我が物顔で訓練飛行することの危険性を夢想する。
2012.08.25