嘉手納基地を「カネダ基地」  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■2月某日 性懲りもなく田中防衛大臣が再びやってきた。知事との会談でも、冒頭だけ記者団の写真撮影に応じて、後は報道陣をシャットアウト。おそらく、失言と腹話術役の防衛省幹部の姿を見られたくなかったのだろう。今回はキャンプ・シュワブなどの基地めぐりを精力的にやったが、嘉手納基地を「カネダ基地」とやってしまった。ここまでくれば、バカとしか言いようがない。週刊誌で叩かれているように、女傑の真紀子夫人との長い結婚生活で、考えることをやめたという処世術が背景にあるのだろう。それでいて、閣僚の中での資産はズバ抜けて一位。資産は手にしたが、代わりに思考力は喪失したということか。田中防衛大臣の訪沖と前後して、仲井真知事は環境影響評価書に対して、手厳しい「NO!」を突きつけた。
 翌日の琉球新報は一面トップで「辺野古は『不可能』」と大々的に打ち、沖縄タイムスは一面トップで「光市母子殺害 死刑確定」を持ってきて、二番手で「アセス知事意見175件 沖縄防衛局に提出」とやった。このところ、沖縄タイムスがスクープで奮起し、琉球新報に肉薄する紙面づくりをみせているが、一面トップのタイトル付という読者への見せ方も大切だという事を痛感する。沖縄ならやはりトップ記事は環境アセスだろう。仲井真知事もかなり手厳しく、環境アセスの手抜きぶりを批判し、辺野古は不可能なので県外移設と付け加えることも忘れていない。26日には野田総理がじきじきにやってくる予定だが、野田総理に秘策などあろうはずもなく、これまでの民主党代表や閣僚と同じく、ひたすら辺野古を哀願するだけだろう。子どもの使いじゃないのだから、沖縄県民が受け入れ可能な腹案くらい持って来い、だ。でないと、再び県庁前には「怒」のプラカードが乱立するはずだ。
 せめて、宜野湾市長選に介入した疑惑の真部沖縄防衛局長の更迭と、環境アセスで防衛省天下り調査会社に巨額の費用を支払っていた事実について、総理としての見解くらい提示すべきである。支持率は低下一方。共同通信調査では29パーセントまで下落。そんな中、消費税増税の税制大綱を閣議決定した野田政権だが、連立を組む国民新党亀井亜紀子政調会長は反対の意思を表明しており、連立政権も危機。与党との議論も全くかみ合っていない。早ければ7月ではなく、4月にも野田政権は行き詰るのではないか。消費税増税しか見えない財務省の操り総理に、沖縄問題が解決できるわけがない。4月には国内の原発もすべて停止する。にもかかわらず、再生エネルギーへの積極的な政策転換も遅々として進まない。TPPも官僚に交渉を任せているため、どこまで話が進展しているのか、さっぱりわからない状態だ。
 野田総理を取り巻く執行部も、田中防衛大臣は論外としても、岡田副総理、玄葉外相、前原政調会長らも口先だけで実行力もリーダーシップも見えない。こうした連中がポスト・野田で総理に就任しても同じだろう。こうなると、消費税増税に一貫して批判し、政権交代の原点にもどることを主張している小沢一郎くらいしか人材はいないことが分かる。裁判の方もかなり有利な状況にあり、最後のエースとして登板の声があがるのではないか。むろん、既得権益を失う大手メディアの憎しみに近い反発感情が、反小沢キャンペーンをはるだろう。しかし、事は日本の将来にかかかわる重要事だ。大手メディアももっと太っ腹になるべし、だ。ねー、菅伸子さんよ。
2012.02.22