財務省の手先  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■1月某日 開幕した国会だが、野田総理の施政方針演説を聞いても日本の先行きは全く見えない。岡田副総理を起用して税と社会保障の一体改革と称して消費税増税を画策しているが、当の岡田副総理が消費税増税は10%アップでは足りないとの発言もしている。この未曾有の震災の中で、景気の低迷、不安定な雇用、年金じたいの引き下げも囁かれる中で、消費税を増税するなんて正気の沙汰ではない。民主党・野田政権が早番行き詰るのは目に見えている。新党構想や政界再編も取りざたされている。政権交代時の公約をことごとく投げ捨て、公約破りの消費税増税を先行させるというのだから、野田総理の本音が、財務省と一体となった消費税増税にある事は、明白である。財務省の手先と呼んでもいい。メディアも基本的には財務省―野田政権と歩調を合わせているのだから始末が悪い。
 民主党は前回の参議院選挙でも菅前総理が消費税増税を打ち出して大惨敗を喫した。その反省は全く見られない。むろん、幹事長すら一切の責任を取らなかった。かつては消費税増税10%を主張していた自民党も、民主党の豹変ぶりに対して、徹底した自己批判が必要との立場にシフトしている。自民党としてはこれ以上、民主党に政権を任せていれば、日本の先行きが見えないという事もさることながら、自民党という政党のアイデンティティじたいも消滅する危機感を感じているのだろう。仮に、民主党が来年まで政権の座に居座れば、自民党じたいの財源も枯渇して潰れるとの見方もあるほどだ。それも、自民党が官僚任せの悪政を続けてきた結果なので同情する気はない。沖縄の基地政策や辺野古新基地建設も戦後の防衛・外務―自民党―米国の独断で進められてきた。今年で、沖縄の本土復帰から40年。沖縄は、日米安保維持のための最大の犠牲をいまだに強いられたままである。
 そんな中、辺野古新基地を推進するための環境アセスの内容に批判が集中している。むろん、日本全体の問題ではなく、沖縄の地元メディアを中心とした限定的な動きだ。アセスの調査・制作があまりにも杜撰だからだ。防衛省は一貫して欠陥機の噂が消えないオスプレイが配備されることもひた隠しにし、環境アセスにも盛り込んでこなかった。絶滅危惧種ジュゴンにしても、海中写真におさめてはいるが、確実に生存しているのは一匹だけで、環境に影響はないという紋切り型の報告で済ませている。むろん、オスプレイが発する低周波の影響についてもほとんど言及していない。
 その謎がばれたのが、沖縄タイムス(1月24日)が「アセス業者に天下り 防衛OBが顧問客観性に疑問」というスクープ記事だ。環境アセスの調査を受注した民間の調査会社に防衛省天下り役人がいたのだ。しかも、随意契約で、癒着の構図が浮き彫りにされた形だ。ライバル紙の琉球新報も翌日の紙面で追撃。「アセス業者に天下り 防衛省OB 科学的客観性に疑義も」(1月25日)。新報は翌日も「辺野古アセス 受託全四社に天下り競争入札なく高落札率」と追撃。むろん、火をつけた形の沖縄タイムスも一面トップで「アセス調査 二社独占 落札率99% 3年で34億円」とやり、27日の社会面トップで「アセス天下り6人に 防衛省契約の6業者」と追撃。この沖縄県地元紙の調査報道で、沖縄では「アセスそのものをやり直せ」という声が広がっている。当然のことだろう。 防衛省の田中前沖縄防衛局長の暴言、田中直紀防衛大臣の無知と失言。防衛省という役所に対しては、根本的な人材教育と防衛予算の無駄遣いを徹底チェックすべきである。こんなメチャクチャな税金の無駄遣いを放置して、消費税増税なんて、野田総理厚顔無恥ぶりも相当なものだ。
 それはともかく、このところ元気のなかった沖縄タイムスの調査報道がスクープを生み、ライバル紙の琉球新報にもいい刺激を与えている。中央メディアには切り捨てられている沖縄だが、地元二紙の相乗効果による奮起だけが県民に希望を持たせてくれている。それが日本のメディアの現実なのだ。
2012.01.28