辺見庸書き下ろし新書  『瓦礫の中から言葉を―わたしの〈死者〉へ』

辺見庸書き下ろし新書 『瓦礫の中から言葉を―わたしの〈死者〉へ』(NHK出版新書)定価740円〈税別〉 

3・11の奈落とは何か
根源の
洞察<私記>
広島原爆、東日本大震災
おびただしい屍、原発メルトダウン
不気味な未来……

NHK「こころの時代 瓦礫の中から言葉を」(2011年4月24日放送)における発言を手がかりに、全面的に書き下ろした作家渾身の書。

 放送内容の文字起こしかと心配していたものの、まさに書き下ろし、納得の内容。どきりとする文章が多く、よくぞ言ったりと脱帽。「3・11以後に読んだ文でいちばんよかったものはなんですか」とのある記者の質問に宮澤賢治の「眼にて云ふ」(「疾中」所収)という詩にとても感動したと答えているところが、印象的だった。何十年も前に読んだことがあるいけれども、大震災後に読んだら、どういうわけか眼が洗われるように風景が見えてきたのです。私は末期の視界を思いました。逝く者の視界にこそ、本物の言葉がありました。とある。