福島をはじめ東北の人たちは我慢強いといわれるが、まさにそのとおりである。

■1月某日 今年も新年の挨拶をフィリッピン・マニラから送りたい。沖縄に移住してから毎年恒例のように正月はマニラ滞在である。しかし、新年の挨拶といっても、昨年は3・11東日本大震災という世界的かつ歴史的な悲劇が東北・関東地域を中心に発生し、福島第一原発のレベル7のメルトダウンまで起きた中で、とても「新年おめでとう」などという気にはなれない状況だ。大津波の事後処理も進まず、ほとんどの被災者は仮設住宅住まい。仮設住宅は手抜きの応急処置で作ったために隙間風が入るというから、この雪の降る厳寒は厳しすぎる。家も仕事も財産も失った被災者たちがあまりにも気の毒すぎる。
 しかし、東京電力霞が関、官邸の杜撰な事故処理の検証がだんだん進むにつれ、怒りがふつふつとわいてくる。福島をはじめ東北の人たちは我慢強いといわれるが、まさにそのとおりである。普通ならば、暴動の一つや、東京電力に対する襲撃事件くらい起こっても不思議じゃない。世界の動きを見ていれば、帝国主義の本家・米国のニューヨークですら、反格差の運動が起こっている。中東、アラブ世界、ギリシャ危機に端を発したEU危機、ロシア・プーチン派の不正選挙に対する怒りの抗議行動、世界中が怒りの抗議を見せている。例外は金正日総書記を失った独裁国家北朝鮮くらいのものか。しかし、それにしてもわが日本も実に「不思議の国」である。
 年末ぎりぎりになって野田政権の民主主義を無視した暴挙ともいえる独裁的政策が国民の目を盗んで断行された。財務省に完全洗脳された野田総理民主党執行部が消費税増税でなぜここまで必死になるのか。ただでさえ景気の悪い日本がよりダメになり、生活困窮者や年金生活者には過酷な税金重圧である。米国への忠誠の一点において、普天間基地の代替施設である辺野古新基地の環境アセスの提出も県庁の御用納めの午前四時に強制的に執行された。沖縄県民の一部は県庁内に座りこみをやって、防衛省・真部朗局長らの暴挙を阻止する実力行使に出た。しかし、極東一の空軍基地のある嘉手納町にそびえたつ沖縄防衛局の建物に放火する人も火炎瓶も投げる人もいなかった。福島県民も大人しいが、沖縄県民もその意味では大人しい。そこに付け込んでいるのが、野田政権や、防衛省官僚どもである。
 「サンデー毎日」の正月グラビアとして企画された有名人への年賀状で筆者にはジュリアン・アサンジが指名された。原稿の締切に間に合わず没になったが、年賀状は書かない筆者だが、ここにその内容の一部をここに紹介しておきたい。
<アサンジさま、いかがお過ごしですか。貴殿のウィキリークスの歴史的な国家機密暴露活動に敬意を表している日本のフアンの一人です。実は私も活字を武器に雑誌メディア「噂の真相」で25年間にわたり、告発ジャーナリズムを実践してきました。書かれた側からの裁判沙汰や右翼団体による肉体的な危害も受けました。「国家を撃つ!」活動は、暴力装置を併せ持つ国家の先兵たちが、さまざまな干渉、妨害、抹殺のための刺客をあちこちに配置しています。 しかし、貴殿の仕事はノーベル賞以上の、世界の平和に貢献する英雄的行為です。私は雑誌という媒体でしたが、一瞬のうちに世界を駆け巡るインターネットに比べれば、手ぬるく、まどろっこしい進化が遅れたメディアです。むろん、世界中に存在する新聞、電波メディアも既得権益の中で、真相を追及するにはタブーや手枷足枷が多すぎます。マイケルムーア監督のドキュメント映画による告発も支持していますが、アサンジさんのネットメディアによる告発・暴露には、市民目線で言えば絶対的正義があります。国家が総力をあげて妨害、潰しを仕掛けてくるでしょうが、世界市民というバックグランドの方が強大で、その存在は不滅です。既得権益を死守する連中にとっては、きわめて現代的なゲリラ革命に見えるはずです。身辺に気を付けて、今年もウィキリークスの存在を全世界に発信してください。既得権益に縛られた旧時代はもう世界的に今年で終わりにしましょう。 米軍基地に占拠された極東の島・沖縄より 岡留安則
 カウントダウン・パーティは今年もマニラの野口裕哉邸(マニラの日本語新聞「まにら新聞」社主)で迎えた。正月休みは、このマニラでリフレッシュして沖縄にもどるつもりである。当欄の読者は、今年もよろしく。
2012.01.01
岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記