放射線汚水放出の記者会見を逃げた菅民主党政権の卑劣さ

私は、東電が今回の放射線汚染水を海に放出した事はとんでもないことだと思っている。
 それを許した菅民主党政権の責任は歴史に記憶される重大なものであると思っている。
 この事はいくら強調しても、し過ぎることはない。
 だからその思いをニュースを聞いた直後に緊急非難としてブログで発信した。
 その直後に日刊ゲンダイから電話インタビューを受けた。
 とんでもない事になりましたね、と。
 すかさず反応を示したメディアは日刊ゲンダイだけだった。
 果たして大手メディアはこの放出をどう報道したか。
 4月5日の大手新聞各紙はそれを第一面で取り上げている。
 早朝のテレビも各局とも真っ先にそれを報じている。
 しかしそれだけだ。これに対する解説がない。
 他に方法はなかった、冷却のほうが重要だ、海に放出してもすぐに希釈されるから危険ではない、より深刻な事態を回避するためには止むを得ない決断だった、などが冷静な顔で語られる。
 いや、冷静をよそおって語られる。
 そしてそこで終わっている。
  いいだろう。誰が責任者であってもそれしかなかったのかもしれない。
 しかしその決断を関係者や政府首脳がどれほど議論し、苦渋して下したのか。
 すべての選択を検証した上での文字通り苦汁の決断だったのか。
 早すぎる決断だという意見が内部で出されたことはなかったのか。
 メディアはそれらを検証して国民に知らせるべきだ。
 それよりもなによりも私が言いたいことは唯一つである。
 これだけ大きな決断をしたのだ。
 なぜ菅首相はその苦渋の決断を、日本国民に、いや世界に向かって、みずからそれを語らなかったのか。
 記者会見で見せた東電の職員の涙は何だったのか。
 皆は知っている。
 一番つらい思いをさせられるのは常に末端の者だということを。

菅直人という政治家は、この国の支配者の卑劣さを、誰よりも見事に体現した首相であるという事だ。   2011年04月05日 天木直人