心・心・心

  『心・心・心』          
心が亡ぶの字は忘れる忙しいだ
心を失ってまでする事は何か
心を見失うとはどういう事か
 心は人間己の主人に違いない
 心が働かねば正に病気だからだ
 心が欲望の奴隷になっていないか
心がやたらにいそぐのが急
心がしずかに考えるのが思
心はどの様な心であるべきか
                
 [心・心・心]−勤勉実直余り急がないのが日本人だったのに、明治の西欧に追い付け工業化以来、人々は己の心を見失うほどに多忙になってきた。つまり多忙が往来するので、人の影はますます薄くなりつつあるという次第だ。
   『高速道路を急ぐ心が走り抜ける』
 道路に死亡事故多発地点と高札。死亡の字には心がもう付いていない。そんなに急いで何所にゆくのかという訳だ。かつての道は歩いてゆくものだった。尋ね訪ねしてゆく道は忘れられ、突っ走る機能本位の道路だけが四通八達。 田辺聖恵