釈尊の聖言 「三つの所」

釈尊の聖言 
 ビクらよ、王が自己の生まれたる所と潅頂を受けて王となりたる所と、戦場にて勝ちたる所の三つの所を生涯忘れざるが如く、ビクも又、三つの所を記憶すべし。ひげと髪をおろし、黄衣をつけ、家を出でてシャモンとなりたる所と、これは苦、これは集、これは滅、これは道と実の如く知りたる所と、すべての煩悩を滅し、煩悩なき心解脱、慧解脱をこの世において自ら悟りたる所なり。
「三つの所」
 今日、真の出家者となることは難しいとしても、真に仏教を求める心を持つ事は可能であろう。永い間、家の宗教であった日本では、一人一人が何時、どこで入信したというケジメがない。読書信仰に至っては教養の域を出ないから確信ともならず、そこからの喜びや充実も得られない。これは何という不幸であろうか。
 釈尊は苦集滅道という四つの真理を掲げ、この四聖諦を説き明かし、それによって一切の苦悩が解決出来ると、一生奨励して旅から旅に歩かれた。じっと坐って来訪を待っておられたのではない。仏け様の実像は坐わりこむのではなく、歩き続けるものであった。
 この釈尊が一生をかけられた四つの聖なる真理を知った所を記憶せよと言われる。それは生涯に一度の出会いというべきものだからだ。
 この四つの真理の実習によって、慧解脱(理性的解決)と心解脱(感情的解決)の二つが得られたらその所を記憶せよとある。死後の話ではない生きた宗教がこれだ。この三つの所こそ、まさに生涯の記念すべき所に違いない。