原始仏教講座 第五講 その一

第五講 その一

 大慈悲の説明をするわけですが、この大慈悲というのは私が勝手に項目、見出しとしてつけたものです。内容は大無量寿経というお釈迦様が亡くなられてから五百年位経った後、紀元元年前後ですね、宗教活動をせよという、人々の願望、というかそういう意図のもとに書かれたお経なんです。
 ですからこれは書かれたお経です。今までの話は全部、お釈迦様がお話をなさった話なんです。すなわち書かれたお経ではなかった。
 ところがここから先というか、ここは書かれたお経です。ですから非常に哲学的であり文学的であるわけです。中国、日本ではこの紀元元年前後に出来たお経を主として展開されるわけです。
 それを普通は大乗仏教というわけです。大乗仏教というのは、大きな乗り物という意味です。大きな乗り物というのは、本来は自分だけが乗り物に乗ってゆく、それは小さな乗り物、小乗であると。人々を乗せてゆく、これが大きな乗り物であるというわけです。自分だけが悟ろうとする、自分の為だけの宗教であればそれは小さな乗り物である。自分が悟るという所に行き着くだけである。ところが人々とともに、人々も一緒にいけるようにと宗教活動する、そういうような乗り物であればそれは大きな乗り物である、で大乗仏教というようになったわけです。ところがここに非常に誤解が生じやすいわけです。