原始仏教講座 第四講 その十七

第四講 その十七

それから愛する者にわかるゝ苦、自分お大事な子供がもし早く死んだりなんかしたら、これはまあ苦しいわけですから、愛する者にわかるゝ苦というわけです。失恋もこの内に入るかもしれませんね。失恋といえば、今の若い人結婚したがらないというんですね。独身貴族、結婚してあとでごたごたなるのが、もういやだから、結婚しないというわけでしょう、いつも安全地帯にいるというわけで、これもちょっと先取りの行き過ぎかもしれませんけれど、面白くもどうもないというか、非常に薄味の生き方するんですね。今の若い人はね。変に年取ったふうになるんです。愛する者にわかるゝ苦、願い求めて得ざるの苦、自分が欲しい欲しいと思って、それが得られない、それが苦しみであるというわけです。まあそういうふうに精神的愛情的苦しみがあると、生理的苦しみもあると、そういうのをひっくるめて、物も心も苦であるというわけです。この場合の物とは、自分の肉体も物としているわけです。自分の肉体および肉体外の物質、そういう物も、その物が自分で欲しい欲しいと思って得られなければ苦しみであるというわけです。精神的なもの、愛情がどうのこうのというのも苦しみであると、そういう苦しみが沢山あるではないかと、それを見ようとしない、気がつこうとしないで、楽しいことばっかし、人生は楽しくというふうにいくのは、人間の現実を無視していると、暗い方を見ないで明るい方ばかりを見ようとしていると、しかしその明るい方を見るからこそ、何となく不安がついて廻るというわけですね。

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