Dear Slave VI 独りファシズム

2013/01/20 00:05
この国は右翼化しているのではなく幼児化しているに過ぎない。

そもそも右翼のアイデンティティとは伝統文化と民族社会の保守にあるわけだ。しかしながら、彼らの支持政党は原発によって国土を剽窃し、ODA名目で隣国へ数兆円の軍事費を拠出して脅威を高め、金融市場の開放により外国人投資家へ国家税収を上回る金を献上し、さらには天下りという官吏の特権待遇のため国防費260%相当の金を投入しているのだから、つまり連中は強権者に自己投影しているだけの馬鹿だろう。

サイバー空間ではネット右翼という連中が跋扈しているのだけれど、彼らの壮語は僅か十余の語彙とストックフレーズに集約されるのであり、そのテンプレートは2009年の衆院選挙惨敗を受け、「自民党ネットサポーター」と広告代理店が思考感染を狙い定式化したものだ。

複雑な金融システムあるいは経済や歴史への理解にいたる知的真空地帯を突破することなく、最単純化された世界認識と言語能力で政治議論に参画するという行為は、ある種の陶酔をもたらすのだと思う。

自称愛国者は隣国のコンテンツが反国家的であるとテレビ各局へ抗議行動を起こしているのだけれど、労働法の改変により累計300兆円もの労働者賃金を略奪する外資に抗議し、ゴールドマンサックスが入居するヒルズ前でデモを敢行するなどという知恵もセンスは無いわけだ。そもそも周辺のアジア民族に対しては居丈高だが、白色人種にはひたすら媚びる連中だからさ。

リアル右翼も似たようなものだろう。もっとも彼らはビジネスとしてイデオロギーを騙っているだけのことであり、思想集団としてのレゾンデートル(存在意義)は限りなくゼロなのだから、直面する危機を俎上に載せることもない。

数百万人の次世代が被曝に晒され、膨大に国土が縮減され、皇居すらも汚染されながら、国士集団が電力企業へ街宣車で乗り込んだという話など聞いたこともないよね。この国のナショナリズムとはかくも欺瞞であり、むしろ空疎な観念に過ぎない。

この時代の憂国とは、なによりも被曝に晒される子供たちを憂う行為なのであり、その救命原資としての社会資本をどう蓄積するかという思索そのものだろう。

あらためてアンドレ・ボーフルの「相手国の精神解体がもっとも有効なストラテジー(戦略)である」という理説どおり、この社会の幼児性とは占領統治政策の所産なのであり、支配の欲動によって構造化された現象形態なのであり、メディアの定型句による白痴化なのであり、それはつまり精神的な民族浄化なのだと思う。