メディアの露骨な世論誘導に対しては、嗚呼!というつぶやきしか出てこない。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■9月某日 沖縄は昨日まで旧盆だった。旧盆初日はウンケーといい、先祖の墓をきれいに掃除したり、さまざまなご馳走を用意して先祖の霊を迎える。いわゆる迎えの日だ。筆者の田舎でも「迎え火」として、門の前で薪を燃やして先祖の霊を迎えたものだ。沖縄旧盆の3日目の最終日はウークイといい、先祖の霊をあの世に送り出す日だ。特にこの日は親戚一同が集まり、語らいや飲み会が行われる。本土のお盆も似たような形式だが、沖縄では念仏踊りから来たといわれているエイサー踊りが地元の路地を回り、華をそえる。特に、石垣島では、「ウンガマ」といわれる伝統行事が有名だ。「グソー」(あの世)からの使者とされるウシュマイとンミーのやり取りは頓智がきいて面白い。やはり、琉球文化の伝統もあってか、本土のお盆よりも賑やかな儀式だ。..
  そのウークイの日に、野暮な東京都は現地調査のために石垣港から尖閣諸島に向けて船を出した。せめて地元にとっては大事な行事である旧盆の日くらい避けたらどうか。尖閣への上陸は国が認めなかったため、搭乗員約25名は、尖閣諸島の周辺で漁船避難のための港が作れるかどうか、海深を調査したりするという。ひょっとしたら一部の「跳ね上がり分子」が強行上陸するかもしれないが、日本が実効支配している以上、過度の挑発行為は、外交上はマイナス効果しかもたらさないはずだ。
 とはいっても、外交方針を決める政権じたいはまったく機能していないお盆休み状態だ。民主党自民党も9月に予定される代表選、総裁選に向けて奔走する日々。民主党は野田政権で来年の任期一杯に向けてどこまで引っ張れるかどうかが勝負だろう。細野豪大臣などを対抗馬に担ぐ動きもあるが、私利私欲と寄らば大樹の陰で蠢く民主党内には、強力な対抗馬はいない。岡田や前原にしても野田総理と似たりよったりのタイプで期待はまったくできない。ならば、公約を破って消費税増税を強行可決したり、原発を再稼働させた責任を取らせる意味でも総選挙の顔は絶対に野田で行くべきだ。野田総理よりはイメージのいい細野大臣が立候補して野田の悪政隠しのような代表選、選挙戦などやって欲しくない。政権交代に最大の期待をした自分の落とし前をつける意味でも、野田民主党の崩壊・消滅を願うしかない(苦笑)。
 民主党もひどいが、自民党もメチャクチャだ。参議院での問責決議を勝ち取るために、民主、自民、公明の三党野合による消費税増税を批判した野党7党案にまる乗り。有権者への信義も節操も全くなし。谷垣総裁の政治生命を賭けた問責決議案が通ったものの、野田総理はカエルの面に○○。「近いうちに信を問う」というセリフも、これまでの公約破りでも証明された嘘つき野田に騙されただけのことだ。どうしても、「加藤の乱」のときの谷垣の泣き虫ぶりが脳裏から消えない。それでも、自民党総裁選で再選を狙うというのだから、自民党も人材不足のようだ。谷垣以外の総裁候補にも、町村信孝安倍晋三、石波茂、林芳正といったどうでもいいような顔ぶればかり。石波はメンタルの反映だろうが、顔と表情が怖すぎるし、安倍は潰瘍性大腸炎が完治していないので体力的に無理だし、すでに終わった政治家だ。町村に野心はあっても、政治力はかけらも感じられない。林にはまだ人徳がない。
 民主党自民党の二大政党がこのような体たらくだから、ネオナチの橋下維新の会に注目が集まるのだろうが、中川秀直中田宏、東国原元宮崎県知事にしても、女性スキャンダルでメディアを賑わせたことのある連中ばかり。橋下代表自身も不倫スキャンダルが報じられたばかり。国会が実質上の閉会などで、メディアは維新の会で話題作りをしたいのだろうが、この国の政治とメディアの貧困なる事情を反映しているだけだ。民主党の原点にもどるという原則と信義を掲げる「国民の生活が第一」に対してはメディアも既得権益に走る体制も基本的に無視の姿勢である。しかし、反原発と反消費税、反オスプレイを明確に掲げて戦えば無党派層に食い込んで善戦間違いなしである。メディアの露骨な世論誘導に対しては、嗚呼!というつぶやきしか出てこない。
2012.09.02