政治の世界のこととはいえ、人間性もモラルもあったものではない。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■8月某日 台風15号の沖縄本島上陸で本島内は、バス、モノレール、船舶、航空機などの交通網が全面的に運航中止となった。全島民、外出規制令みたいな一日だった。沖縄気象台が観測史上最高の1956年9月の台風12号で記録した73・6メートルに匹敵する「大型で強い台風」との異例の記者会見を開いて、瞬間最大風速70メートルと発表したからだ。しかし、実際は本島北部の離島である伊是名島で41・5メートルが最高記録だった。自主避難したり、緊張を強いられた島民は肩透かしを食った形となった。むろん、一部では台風による被害や怪我人は出たが、気象台の予測とは大違いの結果となった。万全の備えという意味ではいいのかもしれないが、個人的には腑に落ちない。予報官も誤報の理由を説明すべきではないのか。北朝鮮人工衛星打ち上げの失敗に備えて本島や石垣島に破片の落下を迎撃するという名目で自衛隊の大掛かりな配備をやった時のバカ騒ぎを思い出してしまった。さらに驚いたのは、いったん中国大陸方面に向かった台風14号が、石垣島方面にUタ-ンしてきたことだ。尖閣に対する中国の天候操作というわけではないだろうが、そんなこともあるのか。
 参議院における7党による問責決議案と自民・公明による問責決議を二つの台風に例えたのが、輿石幹事長。7党の場合には、消費税増税法案の強行採決に対する問責決議案だったが、今回は民主党野田執行部による単独での選挙制度改革と特例公債法案に対する衆議院での強行採決と外交や内政での不手際を理由にしていた。結局、委員会では二つの問責決議を別々に決議し、参議院本会議では7党案に自民党が賛成することで話はまとまった(公明党は欠席の予定)。消費税増税民主党と談合して国民を裏切った自民党と野党7党が、今度は野合することになったのだ。政治の世界のこととはいえ、人間性もモラルもあったものではない。未来を背負う子供たちに対して、どう説明すればいいのか。野合、談合は人間が生きるための必須のアイテムだと、コンピュターゲームのような教え方でもするつもりなのか。
 それはともかく、参議院での通過の可能性すら探らず、問責決議案が出る可能性もあったのに、選挙制度や特例公債法案を衆議院で単独採決した野田民主党は一体何を考えているのか。強行突破のつもりなのかもしれないが、常識的には自爆テロにしか見えない。問責決議により、国会は会期末を待たずして機能不全に陥ることは明白である。筆者は、以前、この欄で野田総理の「近いうちに民意を問う」の意味には、来年の任期いっぱいまで解散しないという見方ができるのではないかと書いた。10月、11月解散では、民主党野田政権の大惨敗は確実である。自民党や維新の会よりも低い支持率では、負け戦覚悟で玉砕戦法で行くしかない。ならば、野田お得意のノラリクラリ作戦で、何とか理屈付けして、来年度予算案まで方向付けするつもりではないのか。そのうち、「神風」でも吹いて、自民党が支持率を落とし、野田政権の支持率が上がることに一縷の望みをかけているのではないかとしか思えない。
 まさに、歴史的な政権交代を成し遂げた民主党の展望なき最後の「特攻作戦」である。腰虎視眈々と政権復帰を狙う自民党も、9月の総裁選には、谷垣総裁の他、町村信孝石破茂石原伸晃安倍晋三らの相も変らぬか顔ぶれが立候補を匂わせている。自民党がゼネコン政治の復活で再び利権誘導を狙い、野田民主党は、財務省を中心とした霞が関、米国とパイプをつないで生き残りを画策する。どっちもどっち、の連中だ。大阪維新の会もネオナチみたいで信頼に値しないし、個人的には民主党の原点に戻ることを宣言している「国民の生活が第一」の小沢一郎代表に最後の望みをかけるしかない。小沢嫌いの巣窟である霞が関や米国、大手メディアに対するアンチとしての個人的見解だ。
2012.08.29