唯一の核被爆国が原発輸出大国になる怪 原発は“悪魔の連鎖ビジネス”と云う事実

 屁理屈はどうであれ、日本に向けて大量無差別殺人爆弾(原爆)を、アメリカが不必要な戦況の中、投下した事実は明白だ。その悲惨な事実は、今歴史の中で消えようとしている。人間と云うものは忘れやすい動物である。忘れやすい動物ゆえに、学習効果が如実に現れない行動を平気でしてしまう。人間が不条理な生き物である所以だろう。 

 しかし、科学的に同レベルの福島原発事故放射能被害・汚染と云う事実を目の当たりにしながら、野田首相は就任後まもなくの9月22日国連本部で「日本は原発の安全性を世界最高水準に高める」、「原子力利用を模索する国々の関心に応える」等々世界が腰を抜かすような発言を白昼堂々行った記憶も、その後のTPPや消費税増税等々の喧騒に埋もれ忘れかけていた。ところが、以下の朝日が報じる記事を読んで、“どういう事なのだ?”と云う疑念が強く感じられた。 

 ≪ 米、原発建設34年ぶり認可へ 東芝傘下の新型炉採用
 米原子力規制委員会(NRC)は22日、東芝傘下の米ウェスチングハウスが開発した改良型加圧水型炉「AP1000」を、米国内で使用できる原子炉として認定した。これによりAP1000の採用が決まっている国内2カ所4基の原発の建設・運転の申請が年明けにも認可される見通しとなった。米国で原発建設が認可されれば、1978年以来34年ぶりとなる。 
 米オバマ政権は東京電力福島第一原発事故後も、地球温暖化対策やエネルギーの安定供給のため原発推進を維持する方針を掲げている。 
 同社によると、AP1000は緊急時に電源や作業員の操作なしでも自動的に原子炉の冷却が維持される仕組みという。2007年の申請以来、NRCの審査が続けられていた。福島原発事故で認定が遅れるとの見方もあったが、NRCはこの日、「航空機が衝突しても耐えうるような十分な安全性を持った設計であることが確認された」とするヤツコ委員長のコメントを発表。NRCの広報官は「AP1000の2カ所の新規申請について来年早々にも認可できる準備が整った」と述べた。 
 建設・運転が認可される見通しなのは、ジョージア州のボーグル原発(3、4号機)とサウスカロライナ州のサマー原発(2、3号機)の計4基(いずれも 110万キロワット級)。いずれも08年に申請し、10年代後半の運転開始が目標。 ≫(朝日新聞) 

 東芝がWHの株を買い増したと云う記事は目にしていたが、今さら東芝(7年ほど棲んでいた)も馬鹿じゃないの?と思っていたが、こう云うカラクリなのかと、先ずは愕然とした。茫然自失な体力なので、充分な分析は勘弁して貰うが、幾つか、この流れと同質の状況を拾っておこう。日立製作所が2020年の運転開始に向けてリトアニアで計画されている原発の建設受注に向け、仮合意を同国政府と締結したと発表した。日立の原発技術はGEだ。あの福島原発1号機だ。

  リトアニアですか~。そういえば既に現在進行形の原発輸出計画としてはベトナムは決定的。その他にヨルダンとトルコが控えているという。原爆投下で、最も明確な被害を受けた国家が、狭苦しい国土と断層に位置する地震頻発国土の上に、気がつくと54基も作られていたこと自体驚きなのだが、その原発の3基が爆発事故を起こし、政府の事故収束宣言に関わらず、いまだ核燃料が行き場を失いマグマの如く福島の大地を恫喝しているのが真実だろう。 

 そんな状況である日本と云う国が、“安全な原発売りまっせ”と言うのだから、普通の神経の持ち主なら、そりゃないだろうと思う筈。しかし、野田民主党政権も、日本政府も、日本経団連も、おそらく労働者の味方・連合も、“TUNAMIがなければ大丈夫”をキャッチフレーズに原発を、民主党は新成長戦略の柱にしているのだから、怖ろしい「国民の生活が第一」な政党である。民主党の経済成長戦略が、増税による財政再建原発輸出と云うのだから、筆者の頭が混乱しても不思議ではない。

  まぁ核技術のノウハウの殆どを支配したいアメリカの戦略の一環として、日本の官僚どもが決めている事なのだろうが、それを唯々諾々と受け入れ実行しようという民主党と云う政党は何なのだろう。たしかに、政策実現の為の財源捻出のテクニックや予算編成の知識がない鳩山・菅・野田にとって、財源については官僚お任せの立場であり、すべてを霞が関にコントロールされるのは当然の帰結なのだろう。小沢一郎と云う政治家だけを抑え込めば、後の政治家は自民党の政治家の半分の政権運営能力もない。小沢さえ潰せば、政権交代なんて平気の平左。これが、すべてだとも言える。そのクーデター計画が粛々と我々の目の前で行われているのだが、本当に気づいている国民がどれほど居るか、甚だ心もとない。

  原発ビジネスと云うもの、核反応の制御や後始末(廃炉、使用済み核燃料の行き場)が人智をもっても解決出来ない程永遠なビジネスであり、膨大なビジネスである事が、こう云う茶番劇のようなビジネスが尤もらしく国策として行われてしまうのだろう。そのビジネスの利権に群がる人々の数も周辺部まで含めると膨大であり、引くに引けない既成事実を積み上げ、悪魔のような連鎖的ニーズを産みだしている。

  原発ビジネスの規模は、大雑把にいうと1基(100万kW級)当たりの建設総コストは数千億、道路や送電線など周辺インフラ整備費用を含めると数兆円になるのだから、具体的経済成長戦略を持てない馬鹿な政治家や官僚にとっては、打ちでの小槌なのである。まして、その稼働運営検査コストもビジネスとして見込めるのだから“悪魔の連鎖ビジネス”と云う事になる。時には、福島原発事故のような問題が生じることで、ニュービジネスが生まれ、医学分野まで儲かる仕組みになってしまう。

  放射能廃棄物の処理もビジネスであり、使用済み核燃料の引き受け、及びその安全研究などもビジネスに結び付く。ただ、これらのビジネスの多くが米国のライセンスによって動いている巨大ビジネスなので、原発が開発され、稼働する度に米国にはライセンス料が自動的に振り込まれる仕組みである事も見逃せない。 

 世界の原子炉メーカーは、スリーマイル島チェルノブイリ事故を受け、急速にその勢いを失った。十数社あった原子炉メーカーは今や大きく4グループに絞れれている。驚くなかれ、日本の東芝・WH、日立GE、三菱・アレバとロシアのロスアトムだけになっている。つまり、原子炉の危険でリスキーな作業を受け持つ日本、そしてライセンス料を受け取る米仏と云う呆れた図式の中に日本のメーカーは組み込まれ、二進も三進も行かなくなっている。中曽根と読売の大罪である。菅・野田のような学級会政権では手も足も出ない。自民党政権も何も抵抗出来なかった。このような流れの中で、原発を導入した電力各社、国民を放射能塗れにしても、態度がデカイわけである。筆者も皆さまも、このような大局的原発事情を頭に入れて、原発ビジネスを見直す必要があるのだろう。

世相を斬る あいば達也