公益性よりも企業エゴの追及しか念頭にない、まるで非情な怪物 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■11月某日 国会が閉幕した。参議院で問責決議が可決された一川防衛大臣は議員報酬返上で辞めないと頑張っているが、その理由が沖縄問題の解決の為にだとは笑わせるではないか。沖縄に対する不適切発言の田中稔沖縄防衛局長は更迭された後、40日間停職の懲戒処分となり、防衛研究所に移動となった。一川防衛大臣普天間基地問題の解決能力があると思っている県民はほとんどいない。沖縄では琉球大学や女性たちの田中局長の不適切発言に対する抗議のシンポジウムが続いており、永田町の幕引き方針との間には大きな溝がある。マルチ商法への深い関与で山岡国家公安委員長参議院で問責決議案が可決された。それでも、野田総理が辞めさせないと頑張っているのは、輿石幹事長に配慮している部分があるにせよ、政権の求心力を失うことを恐れているのだろう。不可解だったのは沖縄選出の民主党衆議院議員二人が問責決議に反対したことだ。民主党沖縄県連のスタンスをますますわかりにくくするだけではないのか。
 それにしても、野田内閣の閣僚の顔ぶれを見れば、まともな大臣は2,3人くらいしかいない。野田総理自身、かつて朝霞の公務員住宅建設にGO!を出したものの、世論の批判を浴びると5年間の凍結に切り替え、さらに今回は藤田政務官が初めて中止を発表した。野田総理がブレまくるのは財務官僚に操られているからだ。年内に消費税増税のメドを逝けることに必死になっている野田総理だが、国会議員定数削減や国家公務員の給与削減は見送りにしたまま、国民に一方的に負担を強いる政策が受け入れられるはずもない。むろん、野田総理の政治力、根回し力では野党も協力するわけがない。党内の小沢グループも大反対だ。国民新党悲願の郵政改革法案も今国会ではお流れ、来年の課題になったわけだが、国民新党・下地幹事長の進退はどうなるのか。労働者派遣法もあっさり先送りだ。
 カンジンの福島第一原発の事後処理も全然うまくいっていない。野田総理は、消費税増税とTPP、辺野古新基地建設しか興味なく、原発に関しては細野豪大臣に丸投げ状態。最近でも、福島産のコメからセシウムが検出され、全県的なコメの出荷規制になるはずだ。福島第一原発から排出されたお放射能汚染水を東電が海中に放出すると発表した途端,全漁連は猛反発である。低濃度であろうとも、漁業被害は拡大し、風評被害は日本の近隣諸国にも及ぶだろう。東電に反省のかけらもなく、あくまでも公益性よりも企業エゴの追及しか念頭にない、まるで非情な怪物のようだ。
 東電に三兆円規模の公的資金の導入、国営化が検討されている。国民感情からいってもデタラメ三昧の東電は潰すべきという意見が多いはずだ。しかし、東電は、電力料金の値上げと原発再稼働で自力更生を目指すとしている。再稼働を狙っているのは新潟の柏崎刈羽原発だ。しかし、現段階では枝野経産大臣も泉田新潟県知事も慎重な姿勢を変えていないので東電の思惑通りいく可能性は疑問符がつく。それはともかく、菅前総理が最後っ屁で通した脱原発の方向性だけは、民主党の存在をかけて死守して欲しいところだ。
  TPPに先駆けて米国産牛肉の規制緩和も実施された。BSE牛肉が紛れ込んだら、厚生労働省はどう責任をとるのか。悲願だった米国の外圧に負けたことは明らかだろう。TPP参加となれば、こうした食品の安全にも疑問符がどんどん付くだろう。民主党三人目の野田総理も支持率を徐々に落としており、政治的なリーダーシップの欠如も段々見えてきた。親米というより、米国の言いなりの傀儡政権と一緒ではないか。仲井真知事が環境影響評価書の提出に対してコメントを求められ、「事務的には防衛省がきめること」とあっさり答えていた。確かに事務手続き上は、その通りだが、「県民は田中防衛局長不適切発言で怒っており、県民の同意を得られない。防衛省も考え直したらどうか」ぐらい、踏み込んでコメントすべきではないのか。全国放送なのだから、知事の弱腰の姿勢はマイナスイメージではないのか。

2011.12.09