岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記 2011.09.15

■9月某日 野田総理の所信表明をチラと見たが、官僚の作文を読んでいるだけで、わくわくするような期待感はゼロ。「正心誠意」とか、「福島の再生なくして日本の再生はない」などというキャッチフレーズは得意のようだが、人間的に深みがないので薄っぺらにしか見えない。個性がないのが個性という事かもしれないが、何かやってくれそうな予感が全くしないのは、松下政経塾のせいなのか、それとも官僚に操られていることが透けてみえるからか。被災地の視察の印象を聞かれて、「死の町」と発言したことに続いて、「放射能が移る」発言で、大臣就任9日目にして辞任したのが鉢呂経産大臣。しかし、原発から3キロ圏の双葉町など、誰が考えても人っ子一人いない「死の町」ではないか。被災者の気持ちを逆なでしているという指摘は当たっているかもしれないが,首になるほどの大問題なのか。  
 本来は、政府が率先して、永久立ち入り禁止を宣言して、住民の居住地や生活の保障を打ち出すべきではないのか。住民には気の毒だが、チェルノブイリを見ても、双葉町で昔のような生活ができるメドは全くたたないはずだ。除染作業は当然としても、原発の危機は続いており、生活自体が成り立たないことは自明だ。鉢呂大臣は、野党戦略にやられただけで、辞任するほどの大罪を犯したとは思えない。そんなことで経産大臣がいちいち辞任していたら、原発対策はますます後手後手に回るだけだ。その鉢呂大臣の後任に枝野氏が滑り込んだのも不可解だ。菅内閣の重要閣僚なのだから菅政権の責任をとってしばらくおとなしくしているべきではないのか。形の上では挙党一致といいながら、菅内閣の重量閣僚だった、枝野、前原、仙谷らがちゃっかりもぐりこむのだから、この政党にケジメという発想などないようだ。むろん、民主党じたいの人材不足もあるのだろうが、少なくと、普天間基地の県外・国外移設は放置状態だ。 
 野田新大臣も日米問題は最大の基軸であり、普天間基地の固定化を避けるために、辺野古への建設に理解を求めると公言している。その指南役が防衛官僚とべったりの北沢前防衛大臣というのだから、先行きの展望は全く見えない。しかも北沢は「普天間チーム」なる組織を立ち上げ、今後とも米軍や防衛省の利権に絡もうと狙っていることだ。特に、「防衛はシロウト」と公言した一川防衛大臣が危ない。防衛官僚に対峙して新たな移設案など打ち出せるわけがない。おそらく、防衛問題の知恵ものである前原や北沢が、自分たちにやりやすい体制をつくるために一川氏を起用したのではないかと勘繰らざるを得ない。前原も北沢も基地問題と経済支援はリンクしているというのが本音の連中である。このままでは一川氏ではいずれ防衛官僚の忠実なロボットになるしかないだろう。
 それでも、沖縄にとってささやかな希望は輿石幹事長が岡田幹事長にかわって沖縄協議会を仕切ることになったことだ。民主党沖縄県連の相談役でもある斉藤つよし議員も内閣官房副長官に就任した。すでに、米国では3・11以降のイラク、アフガン戦争での戦費は100兆円を超えているといわれており、米国じたいが国家財政の危機的状況にある。米国の新国防補佐官は、「普天間やグアム移設化見直しもあり、検討課題と述べている」それでも、日本の官僚べったりの政治家は、できもしない辺野古新基地建設にこだわっている。その本音は一体なんなのか知りたいところだ。