小出裕章「汚い国です。少なくとも50キロ離れた飯館村までは人が戻れるレベルではありません」

2011年8月22日、小出裕章氏が、毎日放送たね蒔きジャーナル」に出演しました。テーマは文部科学省が発表した「1年間の放射線積算量の推計値」(参考:NHKニュース)。そのなかで除染の難しさ、汚染地域への帰宅についての困難さについて飯舘村を例にあげて説明し、国が「汚い国」であると主張しています。


水野「では京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに伺います。小出さんこんばんはー」

平野「こんばんは」

水野「どうぞよろしくお願いします」

小出「こんばんわ、よろしくお願いします」

水野「えー、今のニュースでもお伝えしましたけれども。事故発生から1年間でですね、福島第一原発に近い地域でどれだけの放射線量、積算、だんだん溜まっていって受けるかという推計の値が、初めて文部科学省から発表されました。で、その中には3キロ地点ですけれども、大熊町のある場所で508ミリシーベルトという数値がでております。これはどれくらいすごい、すごいんだろうなあと思いますけれども、これどれくらいすごい意味を持っている数値でしょうか」

小出「えー、そうですね…‥。私は、京都大学原子炉実験所で働いていて、普通の皆さんと違って、放射線を取り扱うことで給料を貰っているということで1年間で20ミリシーベルトまでは我慢しろと言われている人間です。その私から比べて、またその25倍を我慢しろと言うほどの被曝量です」

水野「これたしか一般人は年間1ミリシーベルトまで」

小出「そうです」

水野「ですよね。ということは500倍というか500年分とも言えますよね」

小出「そのとおりです。(咳払い)」

水野「500年分ってでっかすぎて私にはもうその意味がよくわからないくらいなんです」

小出「本当にひどい話だと思います」

水野「はあー、で、この発表がなんで今なんだろうかと、思うんですよ。これは今にならないとわからないものなんですか」

小出「いいえ、とっくに分かっていました」

水野「だいたい何月頃にだったらわかって…できるだけ早く皆さんにお伝えしようとしたら、何月頃に発表できるものだったんですか。」

小出「もう3月中には分かっていました」

水野「ああ、3月中には計算できるものなんですね」

小出「はい」

水野「なんで今なんですか?」

小出「言いたくなかったんでしょうね」

水野「言いたくなかった(苦笑)。平野さんなんで今なんですか」

平野「いやあのー、ま、隠してた、理由はですね、要するにまあパニックを起こしたくないという理由だったんでしょうけど。これはまあ政治がその、逃げてるということで、あのー、自分たちの都合で隠したっていうことですね」

小出「そうです」

平野「うん、避難地域の人達、もういち早くもうこれ、20キロだけじゃなくてですね、30キロ50キロもっともっと、同心円じゃなくて調査すれば、同じくらいの数値が広がる地域があるんじゃないですか」

小出「そうです。えー、1年で積算で500ミリということは、そんなに強いところは広くないと思いますが。1年の被曝で20ミリという私のようなごく特殊な人間にしか許さないという、言ってきめた基準が、多分50キロ先の多分飯舘村までが含まれています。」

平野「うーん」

水野「うーん。今回は警戒区域半径20キロ圏内の50の地点を調べてるんですね」

小出「はい」

水野「こんな程度の、調査でいいんですか? 50地点というのはどうですか?」

小出「別に構いません。ようするに、もう分かっている」

水野「もうわかってる(苦笑)」

小出「はい。もうすべて汚染の程度は把握されていて。私から見れば、(ため息)少なくとも、50キロ離れた飯舘村までは到底人が戻れるレベルではありません。」

水野「あー、でもですね」

小出「はい」

水野「細野原発担当大臣は、ついこないだおっしゃってました。国を挙げて除染に取り組むと。そして戻れる方には戻ってもらうという話でしたよね。」

小出「除染は出来ません」

水野「除染は出来ない、というはどういう意味でしょうか?」

小出「えー。例えば小学校の校庭であるとか、幼稚園の園庭であるとかいう土を剥ぎとるとかはできます。しかし森林の土を剥ぎ取ることは出来ませんし。えー、野原や田畑の土を剥ぎ取ることも出来ません。えー基本的にはもう除染というものは出来ないと思うしかないと私は思います。」

水野「除染は今おっしゃった中で言うと、じゃあ半径50キロ圏内」

小出「えーと半径ではなくて、要するに風下に含まれてしまった地域、です。えー、ですから半径20キロの圏内であっても風下に含まれなかった地域は1年間に20ミリシーベルトには達しないというところはあります」

水野「ありますねえ」

小出「はい。しかし20ミリシーベルトなんていうことを許すこと自身が、法律違反です。国が犯罪を犯すということを言っているわけです。はい」

水野「例えば4ミリシーベルトと低い値もあるというようなまあ見方もあると思うんですね」

小出「はい」

水野「でももともと4ミリシーベルトは低いわけではないですよね?」

小出「ありません。国は普通の人は1ミリシーベルト以上被曝をさせてはいけないという法律を作って、それに違反したものを罰するとしてこれまでやってきました。その国が率先して今、法律を破って犯罪を犯そうとしているわけ、です。」

水野「ただですね、ラジオネーム・こーらるさんごうさんという方がこういう1句下さっております。『今頃に、なってやっぱり、だめという』。つまり、えーまあもう戻れるかも知れないというような淡い期待だけを持たせて、今度はもしかしたら最低10年帰れないところもあると、いうような話になってきているわけですよね」

小出「はい。最低ではありません。何十年、100年、200年という単位で帰れません。」

水野「はあー、じゃあ人間の一生から見たらずうっと帰れない…」

小出「1人の人間から見れば、もう一生です」

水野「でもそのことを国がいいませんやん」

小出「汚ない…」

水野「いかにも何年かしたら帰れそうですし。早い人はもう9月にも帰れそうではないですか」

小出「はい。汚い国だと私は思います」

水野「でも本当にもし、どっかの地域を除染して、帰れるということで、帰してしまう可能性もありますよね、国は」

小出「わかりません。それをもし国がやるというなら、国会議員の方はみなさんそこに住んで欲しいと私は思います。」

水野「うーん。そうですよねえ……。これ例えばチェルノブイリの場合を見れば色々比較できるかと思うんですけど。チェルノブイリだと、どうなんでしょうか」

小出「えー1年…えー、1平方キロメートルあたり、15キュリーという汚染を受けたところを全員避難させました。」

水野「15キュリーってどれだけなんですか? 私たちのわかる値ですと」

小出「えーっと。1へい、平方メートルあたりに換算して、えー、55万ベクレルだと思います。」

水野「55万ベクレルって言うと……」

小出「はい。数値ではわからないと思いますが、要するに私が先程から言っている飯舘村が含まれる範囲です。」

水野「はあはあはは。なるほど。でそれは、もうチェルノブイリの場合は25年かかっても」

小出「帰れません」

水野「帰れないんですね」

小出「そうです」

水野「うーん。あ、そのこともちろん国はわかった上、ですわね」

小出「もちろんです(苦笑)」

平野「先生あのー、菅総理大臣がですね、27日にまあその、こういう厳しい状況を現地に行って説明すると、いうようなことを言ってるんですけれども。」

小出「はい」

平野「こん時、もし帰れないのであれば、あのー、帰れない人たちの生活の基盤というものをそのーどうするかということを国の責任で明確に、言うべきですよね。例えば住宅一つにとっても…」

小出「もちろんそうですし。私はもっとずうっと早くにそのことを国が言って、避難所なんかに押し込めておくのではなくて、はやく避難している人たちの生活を、もっと別の形で復興できるようにしなければいけなかったと私は思いますけれども。なにもしないまま、今になって帰れませんということを言うわけですし。えー、それも、なんか未だに3キロメートルなんてことを言おうとしている、わけですね。それも10年というような数字を言うという。本当に、信じがたい政府だと私は思います」

水野「今回原発の周辺の地域を国が借り上げをしようというような話になってきてますね」

小出「はい」

水野「でその地域が今おっしゃった、恐らく3キロ圏内あるいはまあ少し出た地域でも継続して高い放射線量が計測されてる地域を借り上げようという話の方向のようです。」

小出「ですね」

水野「ええ、これではじゃあ小出先生は全然足りないということでしょうか?」

小出「全然足りませんし。えー少なくともチェルノブイリの基準を当てはめるのであれば風下に入ってしまった50キロに入ってしまった飯舘村ももちろんやらなければいけませんし。日本が法治国家であると言うのであれば、遥かに広大な面積を買い上げなければなりません。」

水野「あのー先ほど除染は無理だとおっしゃいましたけれども。まあ、警戒区域の中で除染をして、暮らせると、小出さんから見て思われる地域ってあるんですか」

小出「えー、申し訳ありません。私は先程から除染は無理だと、言っています。本当にだから子どもたちが集中的に遊ぶ場所、とかは必ず私は除染しなければいけないと思いますけれども。それは、いわゆる地域、えー、市町村ということから言えば、本当にその限られたところしか除染は出来ません。ほとんどのものはもう、いわゆる、野原、山林、田畑、というものは除染なんてしたら土が死んでしまうわけですし、その土を持ってく場所もありませんので、除染は出来ないと思っていただいていいと思います。」

水野「はい。えーしつこく伺って失礼いたしました」

小出「はい」

水野「どうもありがとうございました」

平野「どうもありがとうございました」

水野「京都大学原子炉実験所助教小出裕章先生に伺いました」

(書き起こし、ここまで)

小出裕章氏の意見は「除染は出来ない」と一貫してぶれません。一方現在、東大アイソトープセンター長の児玉龍彦氏は除染活動を国を上げて行ない、安心して生活できる国土を取り戻すべきだと主張し、それに国が従っているように見えます。

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