岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記 2011.08.09

■8月某日 広島、長崎の原爆投下から66年が経った。米国による核爆弾の市街地への投下により、爆心地では丸木位里・俊夫妻が描いたような地獄絵図が展開された。米国は「早く戦争を終わらせるための手段だった」と開き直ったが、敗戦国・日本の指導者たちは何もいえなかった。しかし、一般住民も無差別に殺戮する非人道兵器の使用には毅然として反対を叫び続けることが必要だろう。ノ―モア広島、長崎である。世界最強の軍事力を持つ米国の非人道的な核爆弾の投下は歴史上も、この両都市だけだ。しかし、米国はベトナム戦争においても枯葉剤を大量に散布し、いまだにダイオキシンの高度汚染で苦しんでいる住民の実態が明らかになっている。イラク戦争でも非人道的なクラスター爆弾劣化ウラン弾が使用された。投下された側は無論、投下した米兵も後遺症で苦しんでいるといわれる。国際的にも使用禁止にすべき非人道的兵器であることは間違いない。戦争をやるのはカラスの勝手だが、戦争にもルールがなければ最終的には核戦争にまで発展する。それこそ人類の破滅だ。
その米国の国債がトリプルAから格下げとなった。ベトナム戦争では「敗北」したものの、その後も湾岸戦争イラク戦争、アフガン戦争と世界最強の軍事力を見せつけてきたが、戦費の拡大とリーマンショックの影響で膨大な財政赤字を抱えてしまったためだ。おかげで、株価は米国だけでなく日本も大暴落。日銀が単独介入したにも関わらず、円高ドル安はさらに加速した。日米欧の先進7か国会議では、金融市場の国際的な混乱を防ぐために緊急電話会議を開き、わがニッポンの野田佳彦財務大臣は「これからも米国債の購入を継続する」とポチぶりを発揮して見せたが、さらなる円高・株安を招いただけ。
その野田佳彦財務大臣が遂にポスト・菅の後継候補に名乗りを上げた。財務官僚のいいなりでしかない野田大臣が総理にでもなれば、ニッポンの対米従属はますます強まり、沖縄は当然のように切り捨てられる。さらに全国一所得の低い沖縄は消費税値上げの直撃をモロに受ける。政治家としての能力がある人物とは到底思えない。松下政経塾出身者に共通するのは口先だけは達者だが、政治家に不可欠の大胆な行動力、指導力、根回し・調整力などの能力が欠如していることだ。野田大臣を担いでいるのは、反菅・反小沢の急先鋒・仙谷由人官房副長官だ。仙谷氏はルサンチマンの人間だが、官僚依存をどんどん強めていることは、経産省の現役官僚として内部批判を続けている古賀茂明大臣官房付の証言通りだろう。となれば、野田氏が仙谷氏のロボットとなり官僚依存をより一層強めるだけで、政権交代の理念も政治主導も雲散霧消だろう。
この野田大臣の代表選出馬と時同じくして特例公債法案も通過するメドがついた。公約だった子ども手当を撤回し、高速道路無料化、農家の戸別所得補償制度もウヤムヤにすることで、自民党公明党の了解を取り付けたのだ。仮に野田氏が代表になれば、自民、公明からも入閣を決める手はずだろう。一体、何のための政権交代だったのか。民主党政権交代に大きな期待をかけた有権者に対する重大な裏切行為である。仮に野田氏ではなく、岡田氏や前原氏であっても同じことだ。特にこの二人は野田氏と違って表に出すぎたこともあって、政治家としての無能力はすでに証明されたも同然である。
となれば、民主党最後の勝負は菅総理に踏ん張ってもらって、脱原発、再生エネルギ―買い取り法案への道筋をつけるまで辞任しないことである。民主党内の仙谷派も自民党公明党も、そしてメディアも「菅やめろ!」コール一色である。かつての小沢バッシングと奇妙に似た構図だ。おそらく、こういう勢力は脱原発に道筋をつけられたくない「原発利権共同体」とつながっていると見た方がいい。菅総理は支持率1%になっても辞めないと豪語したことがある。人間的にも政策的にも問題だらけの政治家である事は間違いないが、こういう一種の変人でないと脱原発などできないのが、日本の旧態然とした政治構造なのだ。どうせ、次の選挙で民主党が勝利する可能性は限りなくゼロなのだから、一か八で脱原発解散選挙をやればいい。戦わずして負けるより、死ぬ気でやれば活路も開けようというものだ。国民も脱原発を圧倒的に支持していることを唯一の支えに、だ。

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