岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記 2011.07.07

■7月某日 福島第一原発は、三号機の水素爆発を防ぐために窒素の注入を計画しているが、原子力建屋の放射線量が高すぎて作業員が動けないために、米国製のロボットで放射線や水蒸気、ゴミなどの吸い込みに挑戦してみたが、線量が下がらないために床に鉄板をしきつめる作戦に転換した。しかし、それでも効果はあらわれなかった。大量の高濃度汚染水の処理ともども、原発大事故収拾への途は相変わらず見えない。その間も放射線量は放出され続けているために福島原発から20,30キロ周辺だけではなく、関東地方から那須・塩原方面までホットスポットが各地に発生しているのが実情だ。原発危機はいまだ進行中なのだ。   
そんな中、玄海原発の岸本町長がいち早く停止中の原発の再稼働を要請したのは周知の通りだ。小躍りしたのが経済産業省。海江田大臣が現地に赴き、「国が責任を持つ」と発言し、住民説明会も開かれた。佐賀県の古川知事も賛意に大きき傾きつつあった。しかし、ここにも原発推進九州電力による卑劣な手段が行使されていた事実が発覚。国が恣意的に選んだ住民が参加した説明会をケーブルテレビで中継した際、九電側は社員や関連会社の社員に「原発再稼働に賛成するメール」をCT局に送るように指示していた。以前にもあった「タウン・ミーティング」のやらせと同じである。 
これには海江田大臣も激怒し、玄海町長も再稼働を白紙に戻すという動きに転じてしまった。海江田大臣も、福島原発の危険性が収拾されない段階での原発再稼働は時期早尚と反省したのか(苦笑)、菅総理の思いつきに引きまわされたのか、ストレステストによる基準外の危機事態を想定したシュミレーションを行うことで安全性をさらに担保する方針を打ち出した。当然のことだが、いち早く安全は確保されたとして原発再稼働を打ち出した政府が相変わらず人命よりも「原発利益共同体」の意向を最優先させたことの意味は重大だ。いまだに、IAEAにも指摘された保安院と東電が馴れ合っている組織的関係性は黙殺されたまま、まったくの無為無策というしかない。だいたい、電力不足や15パーセント節電に根拠があるのかも正しく情報公開されていない。それも原発死守の電力会社の思惑と無関係ではあるまい。  
国策としての原発だけではなく、被災地の復興の方もいまだに遅々として進まず、迷走を続ける民主党執行部だが、菅総理の退陣論だけはヒステリックなメディアも含めて国民的総意のような声となっている。松本復興大臣の辞任など、菅総理のお粗末な人事の数々や党内がバラバラになっている民主党内での主導力の決定的欠落は明らかだ。しかし、菅やめろ!コールの背景には、民主党内の仙谷グループが露骨に蠢いている事実がある。野田、前原、岡田、枝野、安住らの菅追放の動きは、以前の小沢一郎追放を画策した連中と同じグループである。違うのは、小沢追放を目論んだ菅総理本人が、今回はそのターゲットとなっていることだ。黒幕はどちらも仙谷由人だ。 
しかし、仙谷グループは原発推進であり、紛れもない増税派だ。民主党マニフェストとしてきた路線を次々と転換し、自民党との連立まで画策している節操なき連中だ。最悪の菅総理ではあるが、再生エネルギーへの転換だけを最後にやらせたらどうか。脱原発は時代の流れだという楽観論もあるが、「原発利益共同体」グループの粘り腰は尋常ではない。おそらく菅総理以上の粘り腰だと考えた方がいい。その意味では菅総理を辞めさせたい連中は、この法案を花道として通してから勇退させる戦略をとったらいいのではないか。やめないと駄々をこねる総理をやめさせるのは至難の技だ。菅総理には開き直って原発の是非を問う解散総選挙に踏み切る一か八か、破れかぶれ作戦が残されている。今の政界にはダメ菅にかわるまともな指導者がどこにも見当たらないのだから、それも民意を問う最終手段として、ありではないのか。
http://www.uwashin.com/2004/indexdiary.html